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世間知らずの自覚はあった。
それでも、いつまでも守られていてはいけないと思う。
私の通う学校はそれなりの家柄の子が多く、今時ながら許嫁のいるのも珍しい事ではなかった。
うちの姉もそうだ。兄の同級生である俊彦、俊くんは姉の婚約者だった。親同士の緩い取り決めであったお陰で事なきを得たけれど、姉はその許嫁ではなく、近所の稔くんと恋愛結婚した。腕のいい職人であったから、姉と本店を継ぎ、結果オーライ。
今やその元許嫁の俊くんとも稔くんは仲良しだ。
そうなれば俊くんとの話は私にまわってくるのかなって、少し期待したけれど、俊くんには既に決まった人がいて、年齢的にもそろそろ結婚するのかな。
私はそんな俊くんの会社でお世話になることに決まった。俊くんは兄の同期生で、私のお世話になるプロデュース会社の創業者の子息だ。
私が初めてちゃんと異性だと意識した人。兄と同じくらい私を可愛がってくれている。私が心を許せる数少ない男性の一人だ。
親元から離れて働くことに、期待に胸が膨らんだ。夢のOL。それから、何か素敵な事が起こりそうな予感。
久しぶりにわくわくした。22歳の秋。
きっと、24歳に、なるまでには出会えているはず。そして、25歳には、私は誰かと恋愛結婚しているかもしれない。
まだ見ぬ誰かと。
ぼんやりと、絵本の中の王子様が、私にすっと手を差し出し、その手に自分の手を乗せる、そんなシーンが思い浮かんだ。
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