第2話 小百合

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俊くんは、コツコツと数歩歩くと、ドアに鍵をかけた。 「誰もノックせずに入ってきたりはしないがな、念のため」 「元々、結婚は家同士の付き合いだって、俺も理解していた。それならと、家柄を知ってる女性と出会う機会は多い。その中でちゃんと恋愛した。もちろん、彼女で良かったと思ってるよ。見合いする前に出会ってたってわけ、これ、秘密な。見合いに持ってったってだけ。根回ししてね。表向きは見合い結婚。あったまいいだろ?」 「……そんな事が出来るの?」 「出来ちゃった」 俊くんはふざけて両手を広げてみせた。 「小百合だって、出来るさ。小百合は、家の事はそんなに心配しなくていいだろう? 」 確かにそうだ。本店は姉が継いで、本社は兄が継いでいるのだから。 「相手がちゃんとした男なら、反対はされないと思うんだ」 「うん」 「結局、みんな小百合に幸せになってほしいんだよ、わかるだろ?」 「うん、分かってる。感謝してるんだよ、ただ……自然に恋をしてたいって思ったの」 「OLになりたかったって、例えばオフィスラブ……とか?」 図星でカッと頬が熱くなった。安易な私を俊くんはお見通しだった。 「そ、そうなの。だから会社の飲み会とかもう少し参加して、親睦を深めたいなぁって……」 秘書室以外の社員は、会社で挨拶を交わすくらいしか関係を築けていなかった。
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