第1話 小百合

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 私が就職について口にすると、祖父母をはじめとするみんなが驚きを露にした。 「何だ、小百合(さゆり)には卒業したら結婚させようかと思っていたのに」  そう言った祖父に祖母が頷く。 「何だ、卒業したら店を手伝わせようかと思っていたのに」  そう言った父に姉が頷く。 「何だ、卒業したら、家事を手伝わせようかと思っていたのに。もちろん、花嫁修業で」  そう言った母に、おそらくみんながそれがいいと思ったのだろう。  少しの間があり 「そうしなさい」  祖父がそう言った。 「ちょっと待って! 私、就職したい! 夢だってあるし!」 「夢? 」 「そう言えば聞いたことないわね」  みんなが私に注目する。 「お、OL」  私がそう口に出すと、静寂が訪れた。それもそうだ。OLが夢、だなんて。でも、言葉を用意していなかった私には、後には何も続けられなかった。 「OLか。いいんじゃないか」と、父親 「そうね」と、母親 「そうなると、父さんのところかな」  そういった父親が、兄へと顔を向ける。上層部の父親よりも、兄の元の方が良いと思ったのだろう。いや、兄も重役であるので、実際はそんなに変わらない。 「うん、いいんじゃないか」  兄が頷いた。
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