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真央と別れ、少し離れた場所に行ってから、片桐は考え込むように顎に手を当てた。
「チッチちゃん何処にいるんだろうね」と、茜。
「居場所は分かってる」と、片桐は言った。「チッチはあの家に戻ってる。百キロの距離を超えて。本当の飼い主に会いに来たんだ」
「どうして分かったの?」
「彼女の指に、嘴か爪で引っかかれた傷跡があった。明らかに昨日今日付いたものだ」
「なら、どうして嘘を?」
「玄関にベビーカーがあったろ?多分、あの家には一歳ぐらいの赤ちゃんが居るんだ。チッチを手放したのもそれが理由だろう。赤ちゃんが出来ると、それまで飼ってたペットを手放す人も居る」
「だから、真央ちゃんは嘘を?またチッチが奪われると思って?」
「両親が帰ってくるのは夜だろ?なら明日出直した方が良いだろうな。今日はこの辺のホテルにでも泊まるか」
「親の勝手で、大好きなお友達と離されなきゃいけないなんて可哀そう。真央ちゃんだけじゃなく、チッチも」
「そうだな」
片桐はそう言い、駅の方向に歩き出した。
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