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「岸くんはどう思ってるのかな。……ああでも、進路相談でそれどころじゃないか」
「……進路相談?」
「うん、なんか受験の希望を急に変更するみたいで。今もたぶん、担任の先生ともめてるよ」
「え……」
なにそれ、聞いていない。
(……まぁ、そもそも会ってもいないし、深い関係なわけでもないから話してもらえなくて当たり前か……)
夏休み中、忙しそうだった理由はそれか、って納得する。
でも、会長、進路変えてしまうの?
あのとき「行きたい」って話してくれた大学には、行かないのかな……?
自分の心の中に、さらにモヤモヤとしたものが広がっていくのがわかる。
「陽菜子ちゃん、大丈夫?」
黙ってしまったわたしを見て、篠塚先輩や七瀬先輩が心配そうに聞いてくれた。二人はとても優しくて、わたしの生徒会入りを望んでくれていたけれど。
こうなってしまった以上、本心はー……
「長沢さんの妹を応援するしかないだろ」
普段から無口な高沼先輩が、みんなの気持ちを代弁するように言った。
……そう、生徒会役員である以上、副会長の身内をないがしろにはできない。それまで無言で話を聞いていただけの伊藤先輩も、渋々といった様子でうなずいて口を開いた。
「橋本さん。今までたくさん手伝ってもらったのにこんなこと言うのはアレだけど、今回の選挙には出ないほうがー……」
「あら、どうして?」
ふいに声がしたほうを振り向くと、開いていた扉から入ってきたのは長沢先輩。
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