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マイケルはすっかり戸惑ってしまった。
「デビッド、なに言ってんです、あ、あなたまで?」
すると、彼の上司は「君も知ってるだろう。血小板が減少すると、血が固まらなくなり、傷の治りが遅くなる。つまり体の自然治癒が期待できなくなってしまうんだよ」と、わけのわからない説明をしてきた。
「それがなにか?」
すると、デビッドは「患者の血液を検査した結果、血小板が異常に減少していたろう、あれが謎を解くカギなんだ」と、言いだした。
それはマイケルも気がついていた。ダメもとで、このミーティングルームに来たのも、血液の血小板を作る肝臓の組織を電子顕微鏡で再度、調べる必要があると進言するためだったからだ。
だから、デビッドに「たしかに患者の血液を採取して調べたところ、血小板が平均基準値を下回っていました。ほかにはヘモグロビンの濃度の値が、どんどん低くなり、呼吸困難の原因になっています。内臓や血管内の損傷が回復できなくなるんですから、当然、肝機能も異常を起こしてしまいます。肝臓は血小板を作る臓器ですからね――ボクはこう思うんです、なん……」
だがデビッドは珍しく、部下の意見を手を挙げて制し、「では、そもそも血小板が減少する原因は何かね?」と、訊いてきた。
どうも、もう原因がわかっているらしいのだ。
だから若干の期待に胸を膨らませたものの、マイケルは理性を失ったマーサが気になってしょうがない。襲われないように気を使いながら――
「そ、それはいろいろです、ストレスとか……」と、答えたなり、怪我人とは思えない力強さでデビッドはマイケルに伝えた。
「それが、答えだよ!」
「え?」
「この病気というか、現象はストレスが人間の精神で我慢できる限界を超えるほどプレッシャーを《夢》で与えてしまう。狙われた人間は不眠症になり、そのために体を休めることなく、臓器を酷使し、それが原因で血小板を極度に減らしてしまう。そのために、あたかも異常な細菌が人間を殺しているように見えてしまうんだよ」
「じゃあ、そのプレッシャーを与え続けている原因とは何です?」
「正直な話、患者に悪夢を見せている《何か(unknownアンノン)》としか言いようがないものだ。こいつを避けるにはこっちが血小板を減らすしかない。つまり血を抜くしかないんだが、輸血レベルの損失では《何か(unknown)》を騙すまでには至らない。もっと派手に流血しないとダメなんだよ。そしてマーサの見解だと、怪我をして体内の血液を流出する方が効果的なんだそうだ」
「まさか原因が《dreamdemon(夢魔)ドリームデーモン》とでも?」
そう答えたときだった。
いきなり動けないとばかり思っていたデビッドが起き上がって、マイケルの足めがけてタックルしてきた。
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