ひきずりさま

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「……それで……どうなるんですか」 「『引きずり様』に付いて来られるともちろん『引きずり物』を引きずって歩くことになるでしょ。町の人はみんな知ってるもんだから街中の人に避けられちゃってね。それでも、きっとさみしくて人ごみへ誘われていくのね。けどねぇ、そりゃそうよ。あたしだってあんなの引きずりたくないもの。わるいけど見ないようにしてきたわ。でも大丈夫、気味悪いだけで無害よ」 「……もう普通に生活したり……できないですよね」 「どうだろうね。ウチの姑はもう隠居してたから。はじめの頃はたまに電話がかかって来てたよ。お友達にも電話してたみたいだし。よく商店街へも行ってたみたい。気の毒だったけどねぇ。見ちゃったのは自分だしねぇ」  ――もう駄目だ。  僕は「すみません!」と叫び、そのまま民宿を飛び出してしまいました。
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