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現場は廃校になった学校でした。訪れた海辺の町は静かではありますが、それほどド田舎な印象はありません。しかも合併のため廃校になったそうです。近くに商店もそこそこあって、なんだか思っていたのと違う。学校もそれほど古めかしい感じもない。
(コレ、ほんとうに怖いのかな)
そう思いながら、家庭用のビデオカメラを手に隅々まで調べました。実は僕らにとっては、本当に心霊現象が起こるかどうかなどあまり問題ではなく、ロケ中に演者に危険がないかとか、トイレやコンビニがあるかとか、なるべくストレスなく過してもらえるかどうかがチェック項目になります。
その点でいったら申し分ないロケ地だ。僕らは満足してその日の宿へ引き上げました。
ロケの日にも利用できるかどうか、下見も兼ねて地方へのロケハンのときは必ず一泊はするそうです。シーズン中、ここの海辺は海水浴客でそこそこ賑わうらしい。宿の手配を頼まれた僕は、全く知らないこの町の事を調べました。
ロケーションが期待できる海辺の宿もあるようですが、ぎりぎりシーズンオフのこの時期でも取ることができなかった。海の近くは釣り客にも人気があっていつでも空きがあるわけではないようです。
なので、海目当ての人に不人気な街中の民宿を選びました。今回、海のロケはないので街中の方が便利で好都合です。
雑木林に囲まれた広い敷地の奥にクリーム色のような、何ともいえない色の建物が見えてきました。わりと大きめの民宿です。建物の前は駐車場――といってもむき出しの土ですが、そこにはたぶん、家主のものであろう軽トラと送迎用のバンが適当に止められていました。
“五年前に改装”とネットで書かれていたとおり、建物は綺麗な印象です。
宿に入るとき気になったのは、民宿の脇にある民家です。とても古い……というよりボロい。玄関の前にも雑草がびっしり生えているのでもう住んでいないのだろう。僕は廃校よりこっちの古民家のほうが数倍視聴者受けするんじゃないかと思いました。
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