68人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はすぐにあの古家を勧めたかったけど、もう少し温めようと成り行きを観察していました。
「それじゃ明日、娘に聞いてみます? 近くに住んでるのよ。高校生の孫もいるし、若い人の間なら噂、あるかもしれないねぇ」
「ええ。ぜひ、お願いします。……できたら町の方にも噂について伺えたらと思っていたんです」
「じゃあ、明日ね。朝、電話してみますんでね。行ってみるといいですよ」
「わぁ~良かった! ありがとうございます」
「――ねえねえ。廃校の噂は聞いたことないけどね、昔からこの町に出るって話、あるにはあるんだよ」
「え! そうなんですか。よかったら聞かせて下さい」
「廃校とは全く関係ないんだよ?」
「良いです! ぜんぜん」
「……でもねぇ。こわいんだよぉ~」
(振っといてそれかよ……)
焦らしが上手いおばちゃんは少しおどけた調子だったので、たぶん、言うほど怖くない。僕は若干飽きてきたけど佐伯さんは食い気味に身を乗り出しました。
「大丈夫ですよ、私たち怪談の番組のために来てるんですから。ね、槙くん」
「ええぜひ聞いてみたいです」
「そうだねぇ。でもいいのかねぇ。私から聞いたってのは内緒だよ?」
この前置きもきっとお決まりだ。おばちゃんはずずっとお茶をすすり、話し始めました。
最初のコメントを投稿しよう!