ひきずりさま

　夕食も済み、部屋に戻ると思った通りです。佐伯さんは目を輝かせていました。

「ねえ、槇くん。おばちゃんの話、面白そうじゃない？　廃校より断然、面白そう！　企画変えようか。ロケハン、一日伸ばしてさ」

「えー…。僕、この後(ロケハンのあと)オフだったんですけど」
「だからよ！　一日プラスしても仕事に穴開けなくてすむじゃない。最後にすごい番組できそう！」

　佐伯さんは早速荷物からPCを取り出し、猛烈にキーボードをたたきまくってる。合間でスマホでラインの応酬も始めた。

（自分の部屋に戻ってやれよ……）

　と、思いながら、僕のような新人のADが逆らえるわけでもなく、パンツと靴下を一組しか持ってきていないなぁと思いました。そういえば先輩に、何があるか分からないから着替えは多めに持って行くこと！　って言われてたっけ。こういう事だったのです。
　さいわいコンビニも近くにあるので明日買いにかなきゃ。と、僕は布団に転がりスマホゲームを始めました。