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いつの間にか寝てしまっていたようです。ふと気が付いたときには佐伯さんはもういない。代わりにメモ書きが置いてありました。
“ロケハン、一日延長の許可出ました。明日、廃校の噂話は聞くとして、『引きずり様』についても取材するから!”
(はいはい……)
スマホの時計を見ると五時でした。もう少し寝ようとウトウトしたときです。ドアの外で物音が聞こえました。
ずず……ずずずず……
(……あ。……『引きずり様』だ……)
おばあちゃんの言う通りです。あちこちで引きずってるんだな、と思いました。廊下か、壁か。何かと何かが擦れる音がします。
僕の部屋のドアにも『引きずり物』が触れたような音がしました。擦れる音に混ざってドアがカタっと音をたてました。
(うわ。やば)
怖くてちょっと笑いそうになりましたが、おばちゃんが町の人は気にしないと言っていたことを思い出して、そのまま、寝ることにしました。
ずず……ずずずず……
目を閉じてからもしばらく引きずる音は聞こえていました。もう一度時計を見ると六時前です。
(……メチャなげーじゃん)
一時間近く引きずっています。いい加減、音に慣れてきた僕はまた知らないうちに眠っていました。
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