ひきずりさま

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 目が覚めると七時半。若干寝坊かな、と思いつつ佐伯さんが押しかけてこないので、そのまま布団の中でスマホゲームでもしようと、改めてスマホを見るとラインに驚きました。    佐伯さんです。 『廊下の物音、聞こえる? 『引きずり様』かな』    初めのメッセージの時間は六時過ぎ。ちょうど僕が寝てしまった頃です。佐伯さんの部屋は向かいだ。その後も聞こえてたってことはどんだけ長いんだよ、と僕はツッコミを入れました。 『ちょっと見てみようかな』 『ドア、開けてみるね』 『よくみなきゃいいんだよね。薄目で見てみる』 『ほんとにゴミみたいだよ』 『実物見なきゃいいよね。写メ撮ったらまずいかな』 『撮っちゃったw まだ見てないけど。明日一緒に見よ』 (うわ……佐伯さん……やっちゃったよ)  僕はいい加減だし、なんでも適当にやってきた。それでも本当にやっちゃいけないことは肌で感じることが出来る。佐伯さんは確か青学卒で頭はいいかもしれないけど、そういうのが分からない人なんだな。  悪いと思いましたが、僕はそのまま荷物をまとめて部屋を出ました。会社もバックレるつもりです。ヤバいことに巻き込まれて人生ダメにしたくない。  あたふたと部屋を出たところで、向いの扉が開きました。 「さ、さえきさん?!」 「……槇くん……おはよ。朝食行く? 私、ちょっと具合が悪いの。おばちゃんの娘さんのところへは一人で行ってくれない? 午後の事はまた連絡するから」  佐伯さんは真っ青な顔をしていました。ドアの隙間から見えた部屋の中は、黒っぽいごちゃごちゃした何だか分からないものだらけでまるでゴミ屋敷のようでした。 (……やば……あれ、『引きずり物』じゃん……)
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