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僕の片割れだったあいつがいなくなって一か月が過ぎた。僕はベッドの上でぼんやりと過ごしている。カーテンのない窓から優しい初夏の日差しが入って来るが、それは虚しさを煽るだけだった。
「紅。もういないんだね」
時折、思い出したようにそう呟いてみるも、もちろん答える声はない。だって、紅、紅星はもうこの世にはいないのだ。
僕が生まれた時、紅星も同じくして生まれた。いつも一緒にいて、どこでも一緒。僕が笑うと紅星も笑って、僕が泣くと紅星は慰めてくれる。そして、こういうのだ。
「大丈夫。僕に任せておいてよ。蒼」
そう言って優しく慰めてくれるのだ。そして、大抵の困ったことは紅星が解決してくれた。
だから、僕、蒼星には紅星が絶対に必要だった。欠けてはならないものだった。なのに今、僕はただ一人で病院のベッドにいる。
「僕もそっちに行きたいよ、紅」
掛け布団を丸めて抱き付いたところで、彼がくれた温もりがあるわけじゃない。でも、そうしないと不安で仕方がない。だって、僕は一人じゃ生きていけないのに。
だって、生まれた時から一緒だったんだよ。こんな唐突な別れが来るんなんて、想像できるはずがないじゃないか。
「紅が……嘘だよ」
丸まって布団を握り締めていると、余計に寂しさが込み上げてきて、ぐずっと泣いてしまう。僕はもう泣くような年齢じゃない。16歳の高校生だというのに、また小さい頃に戻ってしまったかのようだ。でも、もういつものように慰めてくれる声はない。
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