出会いはまるで花瓶のように

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そんなことを思いながら、小窓から店内をぐるりと見渡した時、カウンターにいた男性とバチリと目が合ってしまった。 「いけない!」と思わず小声で漏らすも、相手の男性はニコリと微笑み会釈してくれた。   これって……お店に入ったほうがいいよね?   入り口の扉から怪しいぐらいに店内を覗いていて、お店の人にも気づかれたのに、このまま素通りするのはちょっと気が引ける…… 私はそう思うと、肩に掛けていた通学用の鞄を掛けなおし、「えいっ」と心の中で気合いを入れると勇気を出してお店の扉を開いた。   カランとカフェに入ったような音が聞こえたかと思うと、初夏の暑さが姿を消して、首筋をひんやりと心地良い風が撫でた。
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