出会いはまるで花瓶のように

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「ほほう。それは不思議な話だね。この店では猫なんて飼っていないよ」 「え? でもたしかにそこに……」 そう言って私はついさっき見たばかりの古いダイニングセットを見た。 そしてハッと息を飲む。 あれだけ呑気に寝そべっていたはずの黒猫が、綺麗さっぱりいなくなっているのだ。 「あれ? たしかにいたはずなんだけど……」 そう呟きながら、私は店内の隅々に視線を走らせる。 テーブルの下に棚の下、もしかして入れ違いに出て行ったのかなって思って窓の外を見てみるも、どこにも黒猫の姿はない。 おかしいなぁ、と一人ぶつぶつ呟いていると、お店の人がクスクスと笑う。
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