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オペレーション 2『 掃討戦 vs 迎撃戦 』
UC.0079.12.26 17時55分…。
ザンジバル級機動巡洋艦
『ガナルカナル』はソロモン脱出残存艦隊と合流、護衛任務に就いた。
暫くすると、ソロモン脱出残存艦隊 旗艦 ドロス級大型宇宙空母 2番艦 『ドロワ』より、緊急暗号電文が全艦隊の艦艇に向け、送信された…。
暗号電文の内容は
『後方 ソロモンより、連邦の掃討艦隊出撃す。敵艦隊接触時間 20時05分。各員、第1戦闘体制。各員の迎撃戦での奮闘を期待する。』
だった。
「連邦め! 傷ついたソロモン脱出残存艦隊までも根刮ぎ、爆沈させるつもりなのか。
いくら戦争とは言え、連邦には『武士の情け』と言う武士道精神はないのか? ならば、こちらから、奇襲を仕掛けて、連邦艦隊を沈めるまで。我が艦には【黒い疾風】の
異名を持つ女エースパイロ
ットがいるのだかな。」
ザンジバル級機動巡洋艦 17番艦『ガナルカナル』ブリッジ。艦長たるロマンスグレーのダンディーなレビッヒ・ハイルマン中佐の呟きだった。
レビッヒ中佐は、艦内MSデッキに艦内内線電話を回し、アンネ・ヴァィアゲル中尉を呼び出した。彼女こそ、中佐が自慢していた【黒い疾風】その人であった。
彼女はオーストリア系ドイツ人で、長いブロンドヘアに碧い瞳、士官学校首席卒業、MS訓練学校も優等生で卒業し、
UC.0078.10月、宇宙攻撃軍所属 第18巡洋艦隊 ムサイ級 軽巡洋艦『ジグメル』に少尉として着任。日々『ジグメル』のMS小隊隊長として、ソロモン宙域にて、対連邦艦隊攻撃訓練に明け暮れる。
MS訓練学校優等生の特権にて、当時の愛機たるMS-06S
の機体色を一部をカスタマイズ。頭部、左肩スパイクアーマー、右肩シールド、胴体、下腿部を、彼女の好きな色、黒に塗装した。
UC.0079.1.3…。
運命の『ジオン独立戦争』開戦。地球連邦政府にジオン公国を名乗り、宣戦布告す。
彼女はサイド1駐留の連邦宇宙艦隊の撃滅に従事。
240mmザクバズーカを自在に操り、サイド1駐留軍連邦宇宙艦隊のサラミス級汎用型宇宙巡洋艦×3、レパント級ミサイルフリゲート×5、セイバーフィッシュ宇宙戦闘機×7を撃沈・破す。
彼女は、この戦果により、少尉→中尉に昇進す。
そして、愛機はついに全身、黒一色に再塗装された。一部関節のみ、シルバーを差し色として採用した。
UC.0079.1.15…。サイド5。
ルウムと呼ばれるサイドである。この宙域で、ジオン公国宇宙艦隊全軍と連邦宇宙艦隊の大半が激突した。
世に言う『ルウム戦役』である。戦力差は、1 : 4。
彼女はこの戦場でも、女性エースパイロットとして、目覚ましい活躍を見せる。
マゼラン級宇宙戦艦×2、サラミス級汎用型宇宙巡洋艦×3、レパント級ミサイルフリゲート×6、セーバーフィッシュ宇宙戦闘機×7を撃沈・破した。
この戦役で、連邦宇宙艦隊は
ジオン公国軍が秘密裏に開発、量産、配備した新兵器『人型空間機動兵器』=MS
の前に何の抵抗も出来ず、壊滅した。この戦役を教訓に連邦は自前のMSの開発に乗り出すのである。
これが後に『V作戦』へとプロジェクトが統合されていくのである。
UC.0079.12.26 18時55分。
ザンジバル級機動巡洋艦
『ガナルカナル』MSデッキ。
【黒い疾風】の異名を持つ
ジオン公国軍屈指の女性エースパイロット、アンネ・ヴァィゲル中尉は、不本意ながらも『ガナルカナル』艦長たるレビッヒ・ハイルマン中佐が
自分の為に急遽用意をしてくれた宿敵連邦からの鹵獲MSたる、黒いRGM-79『Gem 』に乗り込む決意を固めていた。
そして、レビッヒ艦長より『ガナルカナル』の第1MS小隊の指揮権を任されていた。
アンネ中尉は、旧ソロモンから出撃した、連邦宇宙艦隊への奇襲迎撃戦前に第1MS隊の各パイロットに訓辞を述べた。第1MS小隊は全員女性パイロットだった。中には以前、部下だったアイリー軍曹も居た。アンネ中尉は、訓辞の後、各パイロットを解散させ、アイリー軍曹に話しかけた。
「アイリー。死ぬなよ!」
「中尉。有り難うございます。はい。自分はこんな作戦では死にません。中尉にお誓いします。」
「よし。それでいい。まあ、お前に戦死されたら、今夜のお前からの不要なロングスカートの試着が永遠に出来んからな。死ぬなよ。軍曹。」
アンネ中尉は、信頼する部下とした約束にかなり期待をしていた。アンネも、やはり女なのだ。着たことの無いロングスカートにはかなりの物欲を抱いていた。
第1MS小隊は全機 新型のMS-09R-Ⅱ リックドム Ⅱで編成されていた。
リックドムⅡ は、マ・クベ大佐が提案したジオン公国軍の『統合整備計画』にて開発されたリックドムの再設計改良型MSに位置付けられる。
主な改良点は継戦時間の延長の為の背部両サイドにプロペラントタンクを各×1を標準装備した。
武装等にはベース機体のリックドムで定評があるため大胆な変更はない。
しかし『統合整備計画』の真意はコックピットの共通化にある。これにより、今まで熟練パイロットでも機種変更にはそれなりの訓練期間を要した。しかし、コックピットの共通化はその訓練期間を白紙にする恩恵があったのだ。
UC.0079.12.26 19時55分。
旧ソロモン脱出残存艦隊 旗艦 ドロス級大型宇宙空母『ドロワ』より、奇襲迎撃戦の作戦開始の暗号電文が全所属艦隊に一斉送信された。
UC.0079.12.26 19時57分
ザンジバル級機動巡洋艦
『ガナルカナル』ブリッジよりMS隊に奇襲迎撃戦の作戦
開始伝えられた。
「アンネ中尉だ。我がMS小隊はあたしに続け!ソロモンの雪辱戦と思え! 出撃するぞ」
アンネ中尉は、部下のパイロットに発破をかけた。
「了解であります。中尉。」
アイリー軍曹はパイロットとして尊敬するアンネに真っ先に無線へ返答した。
アンネ中尉が指揮する第1MS小隊は随時『ガナルカナル』の電磁式カタパルトから射出された。
UC.0079.12.26 20時07分
ジオン公国軍敗残兵の掃討戦を画策している連邦宇宙艦隊に先んじて、連邦の裏を斯く
『奇襲迎撃戦』に残存艦隊
の艦隊防宙用のMSを差し引いた全MSを『奇襲迎撃戦』に回した。
敗残兵のジオン公国軍艦隊は【黒い疾風】の黒いMSの先導により士気は高まり、数が頼りの連邦宇宙艦隊の撃滅に皆命を掛ける覚悟を決めた。
この『奇襲迎撃戦』は連邦宇宙艦隊の知るところでは無かった…。
奇襲の有用性は太古の戦からの常勝手段である…。
アンネも充分に理解していた。
オペレーション 2
任務完遂。
オペレーション 3
に続く。
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