オペレーション 1『 黒い Gem 』

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オペレーション 1『 黒い Gem 』

UC.0079.12.26 07時45分…。 ザンジバル級 機動巡洋艦 27番艦『ガナルカナル』 女性士官個室 208号室。 アンネ・ヴァィアゲル中尉の 部屋だ。 アンネは、アラームで目覚めたばかりだった。 長いブロンドヘアが寝癖でぐしゃぐしゃになっていた。 アンネは下着を脱ぐと、洗濯したの好きな柔軟剤の香りが付いた、白い軍支給のバスタオルを身体に巻き付け、艦内の狭いユニットバスのシャワーへ。アンネは『朝シャン』をするのが、学生時代からの習慣だったのだ。 アンネはジオンの好きな女性アーティストの歌を鼻歌混じりに口ずさんだ。機嫌はよかった。 数分後、アンネはシャワーから上がり、やや小型の女性士官用の調度品、ドレッサーの椅子に座り、ドライヤーで自慢の長いブロンドヘアを乾燥させながら、ヘアブラシでブラッシングした。 08時05分。 新しい下着を着衣し、エースパイロットの自分専用にカスタマイズが許可された、黒い女性士官用の軍服に袖を通した。 アンネにしては珍しいタイトスカートの軍服スタイルだった。 そして、ナチュラルメイクにピンクの口紅を差した。 08時15分。 アンネ中尉は『ガナルカナル』の艦内エレベーターで MS デッキに降りる。 朝礼に参加する為だ。 この区画は、MSパイロット、メカニック、管制要員などMS の運用に従事する乗員の朝礼なのだ。 『ガナルカナル』には、アンネ中尉以外に6名のMSパイロットが在籍している。 搭乗MSは、MS-09R×3、 MS-09R- Ⅱ ×3の編成であった。 アンネは先の『ルナツー』潜入レビル殺害奇襲作戦において、愛機の黒いMS-18E-2が中破。やっとの思いで母艦たる『ガナルカナル』に自分自身は無傷で生還したのだった。 愛機は修理不能で部品取り機体に機種変更し、アンネの新型MSは、宇宙要塞『ア・バオア・クー』にて受領と『ガナルカナル』の補給長からは、伝達を受ていた。 戦争も最末期となり、エースパイロットに回すMSすら、軍上層部に太いパイプがない限りは後回しにされ、最終決戦の拠点、ア・バオア・クーには学徒兵用の、ローコスト、ラインが稼働、または流用可能な、MS-06系MSが戦時下に工場フル稼働で量産され、全てア・バオア・クー方面に配備される有り様だった。 朝礼も終わり、アンネ中尉は軍服の襟を緩めた。 「ふうー。通常勤務は朝から疲れるな。軍服は着なれないかなら。あたしは愛機に乗るMSパイロット用ノーマルスーツの方が着なれてるしな。着心地は、あちらが上だな。タイトスカートなぞ、吐き気が出そうだ。」 アンネ中尉は本音を呟いた。 すると、アンネに面識がある女性下士官が話しかけてきた。 「アンネ中尉。軍服はお似合いですが、何かご不満がおありのようで。自分でよければ、お話下さい。中尉の愚痴くらいは、お聞きしますが…。」 「あぁ、アイリー曹長か。 あたしは、軍服のタイトスカートは似合っていると思うか?」 元部下のMSパイロットのアイリー・レーリーッド曹長だった。陥落した『ソロモン』では、アンネがMS小隊長、アイリーがMS小隊員の間からだった。同じ女性同士+同い年+誕生月も同じな共通点の多い 女性下士官だった。 「はい。中尉。タイトスカートはお似合いであります。 あたしも、軍よりの支給時にタイトスカートタイプの軍服を選択しました。やはり、女であります。軍服くらいは女性らしく振る舞いたいでありますから。」 アンネは頷きながら、 「女らしくか…。確かにな。曹長の言うのは理に叶っているな。あたしは、あまりに性格がじゃじゃ馬の男勝り。タイトスカートなぞと思っていたのだがな。お前のお掛けで、あたしも、上陸時にはロングスカートでも試着する気になったぞ。すまんな。アイリー。」 アイリー曹長は、謙遜した表情で 「中尉、ロングスカートでしたら、自分が着ない洋服が自分の居住区にあります。あとでお持ちします。試着されては? 中尉が気に入られたら、指し上げます。あたしには似合わないロングスカートなので。自分と中尉は背格好がちかいので、サイズ的には大丈夫かと。」 「アイリー。悪いな。なら 、そのロングスカートを試着させてくれ。宜しく頼む。12時30分には昼の配食を済ませ、女性士官寝室 208号室に持参してくれ。」 アンネはアイリーに依頼した。 「了解であります。中尉。 では、昼休憩時に持参致します。ジークジオン!」 アイリー曹長はアンネに敬礼し、立ち去った。 アンネはどんなロングスカートなのか楽しみでならなかった。久々の女の幸せを感じる『胸キュン』な今日の予定となった。 アンネ中尉は、愛機自体が今は無いため、女性士官個室に戻り、先の『ルナツー潜入作戦』の報告書を纏めることを 午前中の仕事にしようと思い、エレベーターに乗り『ガナルカナル』の上部に移動した。 2Fで男性佐官が1人、エレベーターに乗ってきた。 アンネは敬礼をした。 「【黒い疾風】…こと、アンネ中尉。調子はどうだ?」 その男性佐官は、ロマンスグレーの紳士的な軍人だった。 「レビッヒ中佐。はい。愛機が無く、肩がなまっております。笑笑」 レビッヒ・ハイルマン中佐。 ザンジバル級機動巡洋艦 『ガナルカナル』の艦長である。 「なら、お前に俺から新愛機を支給してやるぞ。どうする?女性エースパイロット!」 「艦長、本艦の補給長よりは新愛機は、ア・バオア・クーで受領と聞いておりまして…。レビッヒ艦長の権限で新型MSを廻して貰ったとの理解で宜しいのですか?」 「ワハハ…。一言で現すならば『鹵獲機』だな。ある程度はジオン系MSのパーツで改修したがな。お前好みのMSには仕立てあげたつもりだがな。観てみるか? 【黒い疾風】よ。」 レビッヒ艦長は、決してアンネとは呼ばない。それはアンネに敬意を払い、異名を重視していたからだった。 「はい。艦長。【黒い疾風】、新愛機を是非とも、 見学したいであります。」 アンネは嘆願した。 「よし。なら、俺についてこい。」 アンネは、レビッヒ艦長の後ろを歩き、さっきまで居た 『ガナルカナル』のMSデッキに再び、姿を見せる事になった。 レビッヒ艦長はあるMS整備用ハンガーの前で立ち止まった。 「【黒い疾風】、お前の新愛機だ!」 アンネは上を見上げた。 アンネは驚愕しながら 「鹵獲機…。黒いGem…。」 一言、呟いた。 Gem=ジオン公国軍風のドイツ語での『RGM-79』の事である…。 アンネはたった1日も立たずに新たな愛機を受領した。 オペレーション 1 『 黒い Gem 』 2019.08.22 Fin 。 次回 オペレーション 2 『 掃討戦 vs 迎撃戦 』 乞う、ご期待!
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