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その後、長い脚を組んで優雅にコーヒーだった何かを飲み干した水無瀬は、しれっとこう言い放ってまだ発情期を終えていない水樹を置いて出て行った。
「知らないと思うけど僕特奨生だから学校休めないんだよね。ここにアドレスと番号置いておくから、しんどかったら呼んでくれれば夜来るよ。」
多分。
そんないらん一言まで添えて。
「あいつ信じられん…!!」
大体トクショーセーってなんだ。
奨学生か。特待生とは違うのか。
特待生と言えば佐藤先輩だって1ヶ月も部活サボったのに何事もなく復帰してたのに…と、そこまで考えて、ふと怒りが冷めた。
佐藤先輩になんて言ったらいいんだろう。いや、それ以前に。
龍樹だ。
あの後、部屋を飛び出して一体どこへ行ったのか。過呼吸の発作で倒れたりしてないだろうか。
水樹は慌てて部屋を見渡すと、玄関に転がっていたバッグを漁ってスマホを取り出した。
ロック画面に表示されるのは、数件のメルマガと、佐藤からのメッセージが一つだけ。龍樹の名前はない。
授業中かもしれないとか、そんなことは考えなかった。迷いなく龍樹の番号を呼び出して耳に当てて、祈るような思いで数回コールを聞いたが繋がったのは留守番電話サービス。それを何度か繰り返したが、龍樹が出ることはなかった。
「どうしよう…龍樹…」
スマホを握りしめて途方に暮れていると、目に付いたのは一つのメモ。
水無瀬が置いていったメモだ。
字まで綺麗なんて本当腹立つと頭の隅で考えながら、初めて知ったその番号を呼び出した。
ほんの2〜3回のコール。
『…もしもし?』
電話越し特有のくぐもった声が耳にダイレクトに入ってきた瞬間、水樹の身体は発火したように燃え上がった。
「あ、…っ、みなせ…」
『何?もう?』
若干苛立ったような声だろうと関係ない。内容なんてなんでもいいのだ、その声が耳元に届くだけで。
「ん、…はっ、うそ、なにこれ…」
『当分無理だよ?特効薬ないの?』
言葉が一つ耳に入る度にとぷんと後ろから愛液が溢れ出る。
違う、ちがう。
こんなことしたいんじゃない。
水樹は堪らず下履きの中に手を突っ込んで、とろとろになった後孔を撫ぜた。
繋がっていたあの時、結合部をゆっくりと撫ぜた水無瀬の冷たい指先を思い出しながら。
結合部を撫ぜて、内腿を、
下腹部を撫でた。
胸の中心をなぞって、そしてあの時は隠されていたうなじに触れた。
そう、こんな風に。
けれど欲しいのは自分の指じゃない。
「っちが、違う…!たつ、きに…ッ!」
なけなしの理性が働いて、弟の顔を過ぎらせる。
泣いていないだろうか。昔から弱虫で泣き虫で、自分の後ろをついて回るばかりだった龍樹。友人なんていないに等しい龍樹。
そう、水無瀬以外には。
その水無瀬は、自分が。
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