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「…んで、っ…」
なんで俺、Ωなんだろう。
幾度となく思っては、考えても仕方のない事だからと切り捨てた。どうしようもないことに悩むより、楽に生きる方法がないか模索する方がずっといいから。
溢れた涙を拭うのも忘れて、水樹は指先が白くなるまで手に持った電話を握りしめた。
『………龍樹には、僕から話をしておくから。』
電話口で泣きじゃくる水樹をどう思ったのかはわからない。水無瀬は水樹の返事を聞かずに通話を終わらせて、握りしめた電話からは無情な機械音しか流れなくなった。
水無瀬もまた、龍樹を愛していたのだ。そんなの最初からわかっていた。
『私自身のためにも、綺麗な初恋として思い出にしておくの。』
いつかの奈美の言葉を思い出す。
俺は、綺麗な初恋には出来なかった。
2人の仲に亀裂を入れるどころか、2人の仲を引き裂いた愚かな最低のΩに成り下がったよ、奈美。
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