第2話

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そうして穏やかにゆっくりと仲を深めて、それが少しだけ変わったのは中3の夏。 「なぁ、Ωのオスがケツ濡れるって本当?」 放課後、水樹が部活中に見知らぬ同級生に強姦されたのがきっかけだった。 ─── 拒絶の意を示したところで受け入れられる筈もなく、水樹は早々に抵抗の意思を捨てた。無駄な抵抗は疲れるし、怪我が増えるだけだ。 人形のように好き勝手されながら、ぼんやりと浮かぶ水無瀬の顔。清廉潔白、純真無垢、そんな言葉が似合うあの煌びやかな笑顔。 あの人も、性欲とかあるのかな。 いくら水無瀬が人間離れした美貌の持ち主でも間違いなく人間なのだから、性欲がないなんてことはまずないのだけど、あの美しい人にそんな欲望は似合わない。そう思えてきて途端に吐き気がしてくる。既に汚れた自分に。 早く終わって欲しくて無理やり口に入れられたものに懸命に奉仕すれば、淫乱と罵られるし。飲まなきゃ殴られるだろうと飲み干せば、まるで犬みたいに扱われるし。 (ほんと、いいことない、Ωなんて。) ─── どれくらい経っただろうか。 事が終わって下品な笑いを浮かべながら奴らが去っていったのも、もう随分前のように感じた。 見るに堪えない醜態を晒した自分の姿が映る写真と添えられたメッセージを見て、水樹は溜息をつくしかなかった。 首輪なんてしてるから、犬みたいに扱われるのもなんだか仕方ない気がする。 それでも首輪を外す訳にはいかないし、Ωの自分には結局これがお似合いということだ。 (ちょっと寝て行こうかなー…) 疲れた。 ベタベタの顔も身体もどうでもいい。取り敢えず少し休んで、誰もいない時間になったらこっそり帰る方がこの姿を見られずに済むだろう。 うとうとと重いまぶたを閉じかけたその時、ドアが開く音がした。ふんわりと仄かに甘い香りがして重くなった瞼を持ち上げれば、神に愛された美貌を携えたその人が僅かに驚きを滲ませてそこに立っている。 「水無瀬…なんで」 なんでこんなとこに、と続けるつもりだったが、喉がつかえて出てこなかった。 水無瀬はゆっくりと室内を見回してもう一度水樹の姿を捉えると、無言のままツカツカと長い脚で歩み寄り、自分の上着をかけてくれた。 水無瀬のフェロモンが一層感じられる。 甘くて、どこか刺激的な。 「立てる?」 差し伸べられた手を取ろうとして、その白い手があまりに綺麗だったから、思わず躊躇した。その躊躇いに気付いた水無瀬は強引に水樹の手をとって立たせてくれる。 綺麗なその白い手は、ひんやりと冷たかった。
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