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有沙と四両編成、前方から三番目の車両で合流した。有沙は、おっとりと言うか、お姉さん然、としたところがある。
服を見れば、女子力高い系の今年の夏、流行の服だ。早速、茶化した。
「男子とデートの予行演習だったりして?」
有沙は、引きつった笑いをしていた。
「朱莉相変わらずだな。ジョークキツいよ」
メッと子どもをしかるように、人差し指を、わたしのおでこに、押し当てる。直前で止めると思ってた。
キョドるわたしは、真面目にぎゅっと表情を引き締める。
「ゴメン」
「わたしも指あたってゴメンね。空いてる席に座ろう」
適当な席に二人並んで腰を下ろす。反対側の車窓から差し込む夕日が、白いアームカバーを、橙色に染め上げてる。
「汗かきだもん、日焼け止め流れるの。最近はアームカバーを使ってる。有沙は白い肌でうらやましいな」
「ふむふむ。私はしっかり日焼け止めして、昼間は長袖を着て、日焼けしないよう、まあまあ苦労してるかな」
「白い肌が透き通って、内臓は骨が見えたりしそう」
「――だから、ジョークキツいって」
屈託なく笑う姿は、わたしの毒が強い冗談を好意的に受け止めてくれた証だ。小学生からの親友で、許されるジョークだもん。
電車を二度乗り換えて、東名ドーム(東名スタジアム)前駅に到着した。
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