流星の記憶

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 シュンスケの祈りも空しく、高校球児としての穂高はこれ以上はない戦果を得た。  エースナンバこそ獲れなかったが、二年の夏は地方大会決勝で21奪三振の新記録、最後の夏にはダブルエースの片割れとして活躍、夏の甲子園と国体の二冠を達成。秋にはとうとうドラフト会議での指名を受け、相棒の柳澤共々、無事にプロ野球選手への道が開けた。そのあとでもワガママを通して練習に付き合わせたりもしたが、そんな日々ももう終わる。  練習であっても、一緒に走ることはないだろう。二度と。  三年の冬の初めの校内マラソン大会、おそらく真剣勝負の最後のチャンスだった。二人共に毎年入賞しているが、これまでシュンスケの方が一歩及ばなかった。しかし陸上部長距離のエースとして、シュンスケは今年こそ首位を獲らなければならなかったし、強敵のはずの穂高はプロ指名に紐付くばたばたで練習不足だ。  マラソン大会自体は全校生徒が参加するが、当然、スタートラインには有力候補が並んで、号砲直前の独特の緊張感に揺れている。その真ん中に立つシュンスケは、今年は入賞は無理かもなー、などと暢気なことを言っている隣の穂高を呼んだ。 「なあ」 「んー?」  のんびりと答える彼の方は見ずに。  真っ直ぐ前を向いて、シュンスケはひと息で言う。 「俺が一位になったらさ、ちょっと頼みがあんだけど」 「…え?」  長い首を傾げた穂高が問う前に、位置に着くようアナウンスが入った。
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