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星を見よう、と。
穂高にはそう言った。ふたご座流星群も近いし、冬は夜空が美しいからと。
「へえ、天体観測」
佐倉にそんな趣味あったんか、と。相変わらずのんびりと応えて穂高は承知した。ただシュンスケの自宅の場所を聞いて、「え、それ、行き帰り走るとか言う?」とおののいていたが。
もう、彼と走る必要は無かったので、やんねーよと軽く応え、とにかく防寒対策だけはして来いと厳命した。屋外での活動にはイヤというほど慣れているだろうが、観測や観察、観戦など見るだけの行為は想像以上に冷えるのだ。
ひとしきり夜空を見上げたあと、二人は、屋上の片隅にあった誰が置いていった段ボールやら、持参したシートやフリース、ダウンケットを出して観察に備える。今日は望遠鏡等の装備は不要だ。ただ、懐中電灯の下に星座早見表を取り出し、シュンスケは穂高に概説する。
「稜線が見える方が西、イ○ンの看板がある方が南だ。つーことは、東は」
「あ、あっちか」
「そうそう。で、さっき言ってたオリオン座は… 今は12月上旬だからこの時間…」
とシュンスケが有名どころを解説するのに、彼はふんふんと真面目に頷く。そういえば以前、地図を見るのが好きだと聞いたことがあるが、地理や空間を把握する能力には長けているようで、すぐさま飲み込んだ。
「はー。ほんまに冬の星座って分かり易いなぁ」
「空気が乾燥してるし、今日は新月だしな」
「そう考えると、月って明るいにゃなあ」
「だから流星群観察には最適なんだよ」
なるほど、そーいうことか、と感心しながら星座早見表を覗き込んだ穂高の額は、シュンスケのすぐ目の前にあった。野球部引退後、坊主頭からいくらか伸びた真っ黒な前髪は、少し揺れれば触れそうなほど。
もう、2センチもない。
シュンスケはすっと身を引いた。懐中電灯の輪から外れた自分の影が大きく動くのを感じながら、敷物やケットを忙しく広げるふりをする。そして穂高を促すと、ありがと、と言いながら彼もダウンケットにくるまった。結局、少しでも暖を取ろうと二人の距離は近付く。
そうして、並んで空を見上げる。
「流れ星って、そんなカンタンに見えるもん?」
「見える。てか、べつに流星群じゃなくても、粘ればふつーに見られるぞ」
とシュンスケが言うなり、夜空の片隅にきらりと細く星が流れるのが見えた。
吸い込まれそうな深さと透明度に、
濃紺の天蓋へ昇ろう
もし、降る星に祈るとして いのるとして、
なにを
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