流星の記憶

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「しかし、この点々つーか、ツブツブつーか、なんでこれが”こぐま”になるんや?」  ぽろっと穂高の口からこぼれたのは情緒もロマンもない感想で、答えるシュンスケの声もため息交じりになった。 「つぶつぶって。昔のひとは… 想像力豊かっていうか、余ってたんだろ。ネットもテレビもないし」 「…暇だった、と」 「いや、まあ、それこそ死活問題っつーか、今みたいに写真とか紙だってないわけだし、名前を付けないと先に進まないっていうか。天文学ってそうとう昔から発達してたろ、それこそ農耕民族のセーカツにさ。地図とかふわっとしてた大昔は、星の位置を見て旅してたりしたわけだし…」  訥々としたシュンスケの説明に、またも穂高は素直に反応した。 「えっ、だって星の位置ってちょっとずつ変わるんやろ?」 「そう。だからちゃんと計算して、少しずつ補正して」 「マジか。昔のひとすげえな!」  天動説の頃だって天球儀とかあったろ、まあ、川とか山の方が目印としては役立つだろうけど、と言いさして、シュンスケは穂高の名前の由来を思い出す。 「そういや、穂高って山の名前なんだって?」 「ん、そう。なんや、佐倉、よう知っとるな」  と意外そうな貌をする穂高に、ちょっと前に写真部の長峰と知り合って教えてもらった話をする。  ただ、その時にもらった写真の話はもちろんしない。彼の姿はネットにも雑誌にも溢れているが、ほとんどが相棒とのツーショットばかりだったから、長峰には足を向けて寝られないと思ったほどだ。  マウンドに唯一、凜乎として立つその姿は。
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