牙を向けられる

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 俺は、何事も夢中になると周りが見えなくなる。それは物に対しても、人に対してもそうだ。  だから、俺は人と深く関わることを恐れた。深く関われば必ず、人に傷つけられるし、人を傷つけてしまう。  俺は、目の前に立つ彼女の微笑みから覗く犬歯に、底知れない畏れを抱いた。そして、その口から漏れた言葉は、俺の心を静かに傷つけた。 「私も、オメガは嫌いですから」
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