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11・ファミレスにて
俺が帰る道と反対の道を、たわいの無い話をしながら三人で歩いて行く。学校から少し歩いて行くと、大きな道路出る。
その道沿いにファミレスがあった。
「着いた! 混んでないといいな」
田中はそう言って一番にお店の中に入っていった。
「いらっしゃいませ、三名様でしょうか? 」
指を三本立てて、店員さんが迎える。
「はい」
「では、あちらのお席へどうぞ! 」
完璧な笑顔での接客対応だ。俺達はゾロゾロと案内された席に着いた。
「何にするー? 俺、イチゴパフェ!」
田中が一番に目についた、イチゴパフェに決めたらしい。
「あ、じゃあ僕はドリンクバーで」
関根も決まったようだ。
「高梨さんは? 」
二人の視線が俺に集まる。
「あっ……、と。俺も同じ物を」
そう答えると、
「えっ!? イチゴパフェ!? 」
田中が思わず、といった感じに声を出した。
関根を見ると、同じく驚いているようだ。
「違う、ドリンクバーの方だ! 」
俺は二人に言った。
「高梨さん、我慢しなくていいよ!」
田中がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「別に我慢なんてしてない」
無表情で返事をした。
「じゃ、注文するか」
注文のボタンを押すと、ピンポーン!と音が鳴って店員さんが俺達の元にきた。
「イチゴパフェとドリンクバーを二つ! 」
田中がまとめて注文してくれた。
「かしこまりました」
店員さんは注文を聞くと戻っていった。
「このイチゴパフェ、あまおうってイチゴが使われていてスゲー美味そうだった! 」
田中はニコニコしてそう言った。
「ドリンクバーで飲み物を持って来ようよ?」
関根が俺を誘ってきた。
「ああ」
「いってらっしゃい~ 」
田中がふざけて俺達に手を振っている。
「高梨さん、行こうか」
俺と関根はドリンクバーのある方に向かった。
その時。
大きなガラス越しに、見覚えのある赤い髪の男子高校生と目が合った。
『リウ? 』
ライトだった。口の形を見ると、俺の名を呼んだようだった。俺に気が付くと、にっこりと笑った。
「高梨さんの知り合い? 」
関根が怪訝そうに聞いてきた。
「ああ」
ライトは隣にいる同じ制服を着た関根に気が付いたようで、軽く手を振って通り過ぎて行った。
「あれ? 呼ばなくて良かったの? 」
「…… 」
ライトを見えなくなるまで見ていたら、関根が少し苛立ったように話しかけてきた。
「友達なの? 」
「ああ」
ライトが見えなくなった方を向いたまま答えた。
「高梨さん! 」
関根が声を荒げたので振り返った。
「あ……、すまん」
顔を見ると何だか泣きそうにしていた。ドリンクバーのある場所は少し席から離れていて、田中に見られてなかったようだ。
「関根、どうした? 」
俺は関根の顔を覗き込んだ。
「高梨……さん」
様子が変だ。
「大丈夫か? 具合でも…… 」
そう言うと関根は、
「何でもないよ。ほら、早く田中の所に戻ろう? 」と行ってコーヒーをカップに注ぎ、田中の待つ席に戻って行った。
「……高梨さんのバカ……。鈍すぎ」
その声はリウには届かなかった。
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