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12・土曜日 ライトの家で
土曜日、ライトから連絡がきた。
『お昼頃、家に来て』
俺はいつもの通りに六時に起きて、お手伝いさんの作った朝ご飯を食べ、犬のジョンと一緒に散歩をしていた。
『分かった』ライトに返信した。
昨日ファミレスで偶然ライトが通りがかったが、そのまま行ってしまった。その事が少し気になっていた。奴ならば、中に入って来るかなと思ったけど……。
いや、俺はまだ奴の事をよく知らない。知らないが……。
「何でこんなに気にしているんだ? 」
クゥ~ン?犬のジョンが鳴いた。
公園のベンチに座っていた俺の側にお座りしていたが、ベンチに飛び乗ってジョンが俺の頬をペロッと舐めた。
「ハハッ! ジョン、くすぐったい」
ジョンを撫でた。何日か前にシャンプーをしたばかりなので毛並みはふわふわ、モフモフだ。しばらくジョンを撫でていた。
「そろそろ帰ってライトの家に行くか」
俺はジョンと走って家に帰った。いつものように、両親はいなかったのでお手伝いさんに出かける事を伝えた。
「地図は……、」
ジョンと散歩していたら服が汚れたので、青いシャツと黒いズボンに着がえた。携帯に送られてきた地図を見て、迷うことなくライトの家に着いた。
住宅街の公園の近く、二階建ての普通の家だった。表札には『柳』と書いてあったので間違いはないだろう。
「…… 」
友人?の家に遊びに来るのは初めてだったので、どうしたらいいのか分からず玄関前で立っていた。とりあえず、玄関のインターホンを押した。
「リウ! 今開ける! 」
ライトの声が聞こえてホッとした。バタバタと足音が聞こえて、ドアが開いた。
「迷わなかったか? 」
ドアが開いて、ライトが満面に笑みで出迎えてくれた。
「大丈夫だった」
「だぁれ?」
ライトの足の後ろから小さい女の子がそっと顔を出した。ツインテールにした可愛らしい三才位の女の子。
「なつみ、お兄ちゃんの友達の “たかなし りう” だよ」
友達……。さらりと言われてびっくりした。
「お友達の りうお兄ちゃん? いらっしゃい! 」
にこぉ……!っとライトに似た可愛らしい笑顔で迎えてくれた。可愛い。なつみちゃんと同じ目線にしゃがんで、
「お邪魔するね、なつみちゃん」
そう言って頭を撫でた。
なつみちゃんはなぜか顔を真っ赤にした。
「たらし……、いや、天然は恐ろしい」
ライトが何かを言った。
「何だ? 」
「いいや。とりあえずリビングに」
ライトは、なつみちゃんを抱っこしてリビングに向かった。
「いらっしゃい! 」
ライトの母(だと思う)が、リビングの奥にあるキッチンから声が聞こえた。
「俺の母」
ライトが俺に母親を紹介してくれた。
「初めまして、高梨 流水(たかなし りう)です。お邪魔します」
ペコリとお辞儀をした。
ライトの母は、
「丁寧にありがとう。お昼ご飯、良かったら一緒に食べましょう! 」と言い、お昼ご飯を一緒に食べようと誘ってきた。
俺はライトの方を見た。
「遠慮するな。皆で一緒に食べよう」
ニカッとライトは笑った。
「なつみと一緒に食べよう? りうお兄ちゃん! 」なつみちゃんも笑顔で誘ってくれた。
「ありがとう御座います」
初めて友達の家でご飯を食べる事になった。
「じゃ、リウは俺の隣に」
テーブルに、ナポリタンスパゲッティが置かれた。サラダもある。見ただけで美味しそう。
「たくさん食べてね?」
少しふっくらとしたライトのお母さんは、優しく微笑んだ。
「頂きまーす! 」「いただきましゅ! 」
ライトに続いてなつみちゃんも手を合わせて、いただきますと言った。
「いただきます」
俺も続いて言い、フォークを手に取り一口食べた。
「美味しい…… 」
思わず口に出た。手作りのご飯。
「まあ、嬉しいわ」
ニコニコとライトのお母さんは笑っている。
「たくさん食べてね! 」とお母さんは言った。
「ママ! おいちいよ! 」
なつみちゃんはお母さんに食べさてもらっている。ライトは凄い勢いで食べている。
「美味い! おかわり! 」
更におかわりをしていた。
その時に気が付いてしまった。
俺はこんな食事をしたことがない。
ご飯はお手伝いさんが作ってくれたが、食事をするのはいつも一人だった。
こんな、母親と子供達が楽しそうに食事をするものなのか……?
「リウ君もおかわり、いかが? 」
お母さんが俺に話しかけてきた。
「お願いします」
ハッと気が付き、笑顔を貼り付けて答えた。いつの間にか皿を空にしていた。
「美味しいだろ? 母の料理」
ライトが俺に言ってきた。少し自慢気だ。
「ああ。とても美味しい」
嘘なく心から言った。
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