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14・帰り道
ライトと、オンラインゲームを一緒に夕方頃まで遊んだ。
「りうお兄ちゃん、帰っちゃうの? 」
なつみちゃんが泣きそうな顔で、話しかけてきた。
「うん。そろそろ帰るよ。……あっ、忘れていた」
お土産に持ってきた、パティシエをやっている従兄弟のお店のお菓子を渡すのを忘れていた。
「これ皆で食べてね」
にっこりと笑ってなつみちゃんにお菓子を渡した。
「あら! このお菓子は有名なパティシエが作ったお菓子じゃない? 」
ライトの母がびっくりして俺に聞いてきた。
「俺の従兄弟が作ったお菓子です」
有名だったのか? 従兄弟の作ったお菓子は確かに美味しいし、予約制でなかなか手に入らないと言ってたな。
「親戚特権で、作ってもらいました」
人にあげる物なら美味しい物をあげたいと思った。
「まあ……! ありがとう、りう君。有難くいただくわね」
「ありがとー! りうお兄ちゃん~! 」
ニコニコと二人は、嬉しそうに笑っていた。
「そこまで送る」
ライトは靴を履きながら俺に言った。
「お邪魔しました」
玄関でライトのお母さんとなつみちゃんに挨拶をしてライトの家を出た。
「また遊びにいらっしゃいね、りう君」
「また来てー!りうお兄ちゃん」
なつみちゃんがお母さんに抱っこされて、バイバイと手を振った。
二人でしばらく歩いていく。
ライトは家の近くにある公園に入って行った。
「ライト? 」
「パス! 」
自動販売機から飲み物を買って、俺に投げてきた。
「! 」
片手で受け取った。
「おごり」
ライトは自分の飲み物を買ってベンチに座った。
「まだ時間はあるだろう? 」
見上げて、横に座るようにポンとベンチを叩いた。
「ああ。貰うな?」
俺はライトの隣に座り、もらった飲み物の飲み口を開けた。ごくごくと飲んだ。意外と喉が渇いていたようだ。
「良い飲みっぷり! 」
ライトが笑って言った。
「今日はありがとな……。ライト」
濡れた唇を拭ってライトに礼を言った。
「へ? 」
急に礼を言われたのでライトは驚いている。
「……俺は中学まで、親から友人との関わりを制限されていた。なので、こんな風に “友達” の家に遊びに行ったのは初めてなんだ」
そう言うとライトは「信じられない」と、俺をじっと見て言った。
「やっぱり俺の家はおかしいよな。大学に受かったら、家を出るつもりだ」
誰にも言った事のない、自分の将来の考え。ライトには言ってもいいと思った。
「リウ、俺は高校を出たら働くか大学に行くか迷っているけど、お前が家を出て自立するのは良いと思う」
ライトは向き合って俺の肩に手を乗せて言った。
「……ありがとう」
ライトの顔を、目を深く覗き込んだ。
よく見ると、ライトの瞳の色は黒や真っ茶色ではない。緑色が混ざったような、不思議な綺麗な瞳をしていた。
「ライト…… 」
だんだん夕方の時間になり、薄暗くなってきた。もっと近くで見ようと、顔を近づけた。
「……ちょっ…、待て……、! 」
何か柔らかいものが唇を触った。
「? 」
バッ! とライトは俺から離れた。
「わっ! 」
勢いよく離れたので、ライトはベンチから落ちてしまった。
「大丈夫か!? ライト! 」
俺はベンチから腰を上げて、ライトの腕を引っ張った。
「ケガはないか? 」
ベンチに座らせて、汚れた服をポンポンと叩いてやる。
「り、リウ…… 」
「ん? 」
見るとライトは手の甲で口を押さえていた。
「口を切ったのか? 見せてみろ! 」
俺はライトの手首を掴んで口から離した。
「ば、馬鹿! よせ! 」
馬鹿?
「俺は馬鹿など、今まで言われた事が無いが?」
思わずムッとして、ライトを睨んだ。
ライトの顔は真っ赤になっていた。
何だか目には涙が溜まっているのか、潤んでいた。
「え? ライト? 」
「お前、俺に何したか気が付いてないのか!?」
ライトは俺の胸元のシャツをグイッと掴んだ。
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