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15・ライトの家の近くの公園で
「……い、今! お前、俺にキスしたろ!? ふざけてるのか!? 」
ライトは顔を真っ赤にしたまま、俺のシャツをさらにキツく掴んだ。
「……キス……? ……。 」
さっき、俺の唇に柔らかいものが触れた。
あ、れ? ……あの柔らかいのはライトの唇?
「あれは、キスか? 」
「何だと!? 」
ライトはギリ…と、首元を絞めてきた。そして体重をかけて、俺をドン!とベンチに押し倒してきた。
「……ちっ! 」
咄嗟に俺はライトの肩を掴んで、力任せに自分の体とライトの体を上下逆にした。
「痛ぇ! 離せ、リウ! 」
真っ赤な顔をして、ライトが俺を見上げている。狭いベンチにライトをつい、押し倒してしまった。
「ごめん……。唇に、軽く何か触れただけだと思って…… 」
俺はそんなつもりは無かった。キスするなんて……。
「あぁ!? 」
ライトがめちゃ睨んできた。
「ふざけやがって! 早くどけよ! 」
ジタバタ暴れている、ライト。狭いベンチに男が二人。密着して足は、はみ出て地面についている。
「クソっ! どけ、リウ! 」
バタバタ暴れているライト。肩を押さえているので起き上がれないだろう。
上からライトを見下ろしていたら……。
髪が乱れ顔を赤くし、俺を睨むライト。
手を動かしてライトの頬にそっと触る。スベスベだ。
「……リウ? 」
魔が差した? つい? わからない。
なぜか俺はライトを見つめて顔を側に近づけて、そっと唇を重ねた。
柔らかい感触を感じた。ライトは目を見開き、体を硬くしたのに気が付いた。かまわず俺は優しく唇を動かし、食むように唇の柔らかさを確かめた。髪の毛に指を入れて、唇をチュッと吸ってから離れた。
俺はライトから離れてベンチに座り直した。
ライトを見ると、放心して身動きしないまま押し倒されたままだった。
「ライト? 」
声をかけてみた。
ライトは両手で顔を隠した。
「ライト? 」
もう一度声をかけてみた。
「お前、どういうつもりだよ…… 」
顔を隠している為、くぐもった声の返事が聞こえてきた。
「ライト」
「何で、キスなんかしたんだよ…… 」
まだ顔を隠したままだ。
何で?
「……何で、……だろう? 」
そう言ったとたん、ライトが起き上がり俺の左頬を殴ってきた。
「ぐっ! 」
俺は座っていたベンチから吹っ飛び尻から地面に倒れた。
「他の、……女の子にそんな態度なのかよ!? リウ! 答えろ! 」
ライトはベンチから立ち上がり、俺に指を向けて怒鳴ってきた。
左頬がジンジン痛く、唇の端を切ったようで血が少し出た。それを拭い、立ち上がってライトの近くに寄った。
「女の子や他のやつには、……したことない」
ライトの目を見て話した。
「……すまなかった、ライト」
「……! リウ……、俺は、 」
暗くなってきた公園には誰もいなかったけれど、風が吹いて葉っぱが擦れ合う音が聞こえた。
「俺はリウが何で、キスをしたか聞きたい」
ライトは真面目な顔で俺に聞いた。
「ふざけてしたのか? 」
問われたので答える。
「いや…… 」
「じゃあ、何で? 」
何で……キスしたか。
「したくなった……から? 」
俺は自分に問うように答えた。
「はあ!? 」
ライトはまた顔が赤くなってきた。それを見て何だか、可愛いと思った。
「何で笑ってるんだよ! 」
ライトに言われて気が付いた。
「……笑っている? 」
「ああ」
思わず自分の顔を撫でた。
「……お前、あまり自分の感情を顔に出さないから」
俺は殴られた所を触ってしまった。
「痛っ」
「冷やさないと」
ライトは、水道のある所まで俺の手を引いて行った。
ハンカチをポケットから取り出して、水道の水で濡らして軽く絞った。
ライトはまた俺の手を掴み、近くのベンチを探して座らせてくれた。
「ほら、これで頬を冷やせ」
ぺたりと冷たいハンカチを頬にあててくれた。
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