2・出会い

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2・出会い

 俺は皆より早く学校へ行く。 朝、必要事項しか話さない冷めきった父と母を横目で見て支度をする。 「行って来ます」 両親から返事なんか無いが毎日俺は玄関で 靴を履いて、ゴールデンレトリバー犬のジョンに挨拶し出かける。 「ワン!」 ジョンは賢い。ちゃんと返事をする。  季節は春。 入学してから何日か経った。もう桜の花は 散っていて道路に絨毯の様に広がっている。時々突風が吹いて桜の花びらが舞う。 「クソ!ゴミが目に入った」  向こうから歩いて来た男子生徒が、目を擦りながら呟いたのが聞こえた。 他校の生徒で向かう方向から考えるとM高校の生徒だろう。見ると、俺の高校ではいない赤く染めた髪に耳にピアス。シャツのボタンを二、三個閉めずに開けていた。 ジッと見ていたせいか、すれ違い様に睨んできた。 あいつとの、 ファーストコンタクトは最悪だった。
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