5・キーホルダー

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5・キーホルダー

「お?昨日スマホ拾ってくれた人だよな?」  そう言って立ち止まった。 「そうだけど」 ジロジロ見られている。なんだこいつ?  「ありがとな!スマホ落として、二回も無くしてさ。今度無くしたら、自分で買えって言われてたから助かった!」 奴はそう言ってまたニカッと笑った。何も腹の底に悪意など無い笑顔だった。  「そうか。良かった」 ポロッと本当に、考えなく言葉が出た。いつもは当たり障りの無い会話をするため、考えてから返事を返しているのに。どうして?  「どうした?」 少し自分に戸惑っていたら、(名も知らない)スマホを落とした奴が話しかけてきた。 「何でも無い」 そう言って目線を逸らし、下の方を見た。  「あ、『ダンジョン・サーチャ』のキーホルダー…… 」 奴のカバンにつけてあったキーホルダーを見つけて、つい、また思わず呟いた。 俺がハマっているオンラインゲームだ。誰も俺がゲームにハマっているとは知らない。 #注意# 『ダンジョン・サーチャ』とは作中に出てくるオンラインゲームで、作者が考えた架空(・・)のオンラインゲームです。現実にはありません。
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