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6・名前
「お!?知ってるのか!『ダンジョン・サーチャ』!」
ニカッ!と笑った。
“夏のひまわり” みたいだと、思った。
「おれさ、今、このゲームにはまっててさ!お前……、えっと、名前」
「高梨 流水(たかなし りう)だ。『たかなし』だ」
あれ?なぜか他校の知らない奴に名前を言ってしまった。
「 “りう” か! いい名前だな!」
断り無く、勝手に下の名で呼んでいる……。
「おい……、 」
「俺は、柳 来冬(やなぎ らいと)!『らいと』って呼べよな!」
勝手に下の名で呼ぶなと言いかけたが、奴は自分の名前も下の名で呼べと言った。
……こいつは馴れ馴れしい奴だ。そう思った。
「あ、遅刻する!……りう!また朝に!」
そう言って走って行ってしまった。足が速いな……。そんなことを考えて奴(らいと)が走っていった方を見ていた。
そういえば昨日も同じことを思っていたな。何か運動系の部活でもやっているのか?
「あ、俺も行かないと!」
「あれ?高梨さんにしては珍しいね。いつもより、登校が少し遅くない? 」
関根だ。ギリギリに教室について席についた。こいつはよく俺に話しかけてくる。
「別に」
遅刻はしなかったけれど、遅くなってしまった。あいつのせいだ。
赤い髪の毛。ピアス。
俺のまわりにはそんな奴はいない。いきなり名前を聞き、下の名で呼んだ。馴れ馴れしい奴。だけど、ゲーム『ダンジョン・サーチャ』にはまっているって言ってたな。
……奴のキャラの職は何だろう?
「高梨さん?」
関根に呼びかけられて気がついた。
「まだそこにいたのか」
つい、座ったまま上目づかいで言ってしまった。
「相変わらず、冷たいなあ」
ふふっと関根は笑って、胸の前でヒラヒラ手を振って自分の席に戻っていった。
すぐに先生が教室に入って来た。
「……では授業を始める」
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