180人が本棚に入れています
本棚に追加
7・クラスメイト
退屈な授業。
ちゃんと先生の話は聞いているが、つまらない。
「ではこのAの問題を解いてもらう」
エー!と教室内で声があがる。
「難しいですー! 」
「無理ー」「わかんない」
「昨日、やったばかりだけどな?」
先生が眼鏡を指で直した。
「高梨」
名を呼ばれた。
「はい」
「解けるか?解けるなら前に出て説明をしてくれないか?」
先生はこちらを見て言った。
「はい」
ガタンと椅子から立ち上がり、教室の前の黒板に立った。
ちょうど昨日の夜に、家で勉強をしたから分かる。スラスラと黒板に解答を書いていった。
「正解だ。よく勉強しているな、高梨」
「いえ…… 」
教室からは、『さすが高梨だ…… 』とか聞こえて来た。
「高梨さん、さすがだね」
放課後になり、帰ろうとカバンを持って教室から出て行こうとしたら関根がまた話しかけてきた。
「たまたま、勉強した所だったからだ」
素っ気なく答えた。何で関根はいちいち話しかけてくるのだろう。
「……そうか。所で、もう帰るの? 」
……もう帰るの? は?
「帰るが?何か用があるのか? 」
ちょっとムッとし、答えた。
「いや、一緒に帰ろうかなと…… 」
関根が一緒に帰ろうと? え?
「たしか、関根は帰る道は逆方向だろう?」
そう言うと、少しがっかりした顔をした。
「知っていたのか……残念」
何が残念か、俺には分からない。ジッと関根を見ていると、なぜか、ふと顔を逸らした。
「話でもあるのか? 校門まででも一緒に行こうか? 」
何か質問でもあるのかと考えた俺は、関根に話した。
「いいの?高梨さん」
「ああ」
「カバンを持って来ますね!」
関根は自分の机に戻ってカバンを取りに行った。
よっぽど何か分からないことを、聞きたいようだな。
「お待たせ、高梨さん」
嬉しそうな関根が俺の所に来た。
「じゃ、行こうか」
俺が先に歩き出した。
「高梨、帰るのか? またな! 」
同じ中学だった、隣のクラスのやつに声をかけられた。
「またな」
ザワザワと野太い声が聞こえてくる。ちなみにここは男子校。色気はないがそれなりに居心地がいい。
「で? 何か質問か相談でもあるのか?関根」
歩きながら関根を見る。
「え……。いや、その…… 」
なぜか関根はしどろもどろになる。
「言いにくい事か? 」
何だろう?歩きながらじゃ駄目な話か?
「高梨さんと、一緒に帰りたかっただけ…… 」
関根は、ぽつりと言った。
「え? 」
俺は関根の顔をまたジッとみた。一緒に帰りたかった……だけ?
「ありがと……。また明日!」
そう言うと、関根は走って行ってしまった。
「あっ! 関根!?」
教室から校門まですぐだ。走って行った関根の後ろ姿を俺はポカンとしばらくみていた。
最初のコメントを投稿しよう!