疑う事ー映画「主戦場」を見て

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
2018年の1月から6月まで新聞のコラムを担当したのをきっかけに、2週間に1度、エッセイやコラムを書き続けています。 これまでブログでアップしていましたが、エブリスタでもエッセイの投稿ができるようになったので、こちらにも投稿します。 ***  先日、放送関係の大先輩と食事をする機会があり、その中で彼が高校でした講演の話になった。 「一番大切なことは疑うこと。テレビや新聞、親の言うことは本当かどうか疑って、自分で調べてみることが大切」と語った。それを受けて高校生から「それをやり続けることは辛い。どうしたらいいのか」と質問があったそうだ。私もどうしたらいいのかと思った。  先輩は言っちゃいけないことだったんだけど、と前置きして続けた。 「大人になったらわかるよと言っちゃったんだよね」  同席していた一同、ああー……となった。  映画「主戦場」を見た時、真っ先にこの先輩の言葉を思い出した。この映画の監督は日系アメリカ人のミキ・デザキさん。愛知トリエンナーレの「表現の不自由展」でも少女像が注目されたが、アメリカでも少女像設置をめぐり議論が起きていた。映画は、彼の「なぜアメリカで韓国と日本の慰安婦問題が議論されなくてはいけないのか」という疑問から始まる。彼は、アメリカ、日本、韓国で、従軍慰安婦は軍部の強制であったと主張する人と、強制はなかったとする人に徹底的に話を聞いてゆく。  彼が「慰安婦とは何か」「強制連行はあったのか」「韓国以外の慰安婦問題は」「アメリカはどう関係しているのか」という疑問を掘り下げてゆくと、過去現在の日本が見えてくる。  日本が隣国からなかなか信用されない理由がわかった気がした。日本から反省の姿勢が見えてこないからだ。教科書から慰安婦問題が消えて久しい。負の歴史を後世に伝える意味は反省と、未来への決意だ。  自分に連なる日本人が、身勝手な大義名分のために他人の人権を蹂躙したと認めるのは辛い。でもそれを認め、二度と繰り返さないよう対策し、反省の姿勢を示し続けることでしか信頼を得ることはできない。それは本当に大変だ。  「疑い、その答えを探し続けることは辛い」といった高校生の言葉が、大人になった私の胸に刺さった。 9c4732b6-889f-4805-824c-9c9d401e46d8 ブログでは2019年8月8日投稿。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!