巫女さん

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みんなは高校の時バイトとかした? 私が通ってた鎌倉の学校は 偏差値低いクセに (現在はそうでもないらしい) 校則が厳しくて 違反が見つかれば即、退学だったよ。 あははは。 気付くと、アレ?あの子いない…てな感じ。 神隠しの村かっ! 当然バイト禁止。 でも、バイトした事あったよ。 お正月、川崎方面の神社で巫女さん。 場所が川崎なら学校関係者に 見つかる事もないな…って。 友達と付け毛してさ。 今で言うとこのコスプレ感覚。 しっかしお正月にあの衣装、凍えたね。 雪がチラつく中 体じゅうにカイロ貼ってさ。 見えないように中メッチャ厚着して 紅い袴の下はレギンス重ね履き。 まさにヒートテック十二単。 足元には電気ストーブ。 寒かった記憶しかないよ。 お仕事はと言うと……。 お神酒を振舞ったり 御守りや破魔矢を売りさばきます。 参拝客の皆さんは御守りを何個も買い、 そして何故か、一万円札で払う。 計算機も、レジも無いんだっての…。 算数苦手なの! でも、まぁこう言っちゃ何だけど 大手の神社さんと違って 参拝客が行列で押し寄せて来るって 訳でもなかったのは幸いだった。 けど、子供が一人ウロついてたの。 小学校一年生位の男の子。 子供の事友達に言ったら 見てないって言い張るんだ。 冬のコタツ亀状態。 要は寒くてストーブから 離れたくないんだろ。 拝殿の裏手は狭くて 柵の先が崖って言うか 結構な段差になってた。 人が立ち入らないよう注意してね……って 宮司さんに言われてたから見に行った。 「チッ!親は何やってんだ。放牧かよ?」 って心の中で悪態を吐きつつ かじかむ手をこすり合わせて 後ろ髪引かれストーブから離れる。 チョロチョロしてたのに もう、居なかった。 行き止まりになってるのにオカシイなって。 でもまぁ、子供なんてそんなもんだ。 着物の柄だけがヤケに記憶に残った。 正月も過ぎ、いつしか桜が舞い散り 新緑の季節が巡って来た。 そして再び、蝉時雨に耳洗われる。 何か学校の課題で 浴衣縫うってのがあったの。 やっぱり女の子の浴衣の方が 金魚とかお花とか柄も可愛いからさ どこも布地が売り切れで 男児用の布地しか残ってなかった。 浴衣の柄見てて全身に電流が走った。 察しの良い人は もう、判ったでしよ。 思い出したんだよ。 あんなに寒い日だったのに 神社で見た子供……浴衣、着てたなって。 *この話は、妄想コンテスト参加の為 エッセイ『砂かけ婆ァと呼ばれて。』から 抜粋しました。
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