りんご飴が食べれない【人ごみコンテスト応募作品】

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 いや、僕だけじゃないみたいだ。もっと近くで麻里さんを見つめる人がいる。   フードつきのスポーツウェア。   彼女たちは光のアートに照らされていた。   彼女が背伸びをする。フードつきのスポーツウェアも下を向く。   そのときサビの歌詞が僕の鼓膜を震わせた。    グッバイ    君の運命のヒトは僕じゃない 辛いけど否めない     でも離れ難いのさ その髪に触れただけで     痛いや いやでも甘いな いやいや    グッバイ    それじゃ僕にとって君は何? 答えは分からない     分かりたくもないのさ     たったひとつ確かなことがあるとするのならば    「君は綺麗だ」    絶え間なく上がる打ち上げ花火が彼らを祝福していた。『レイク』の向こう側からは、「たーまやー!」と楽しそうな声がする。  やっぱり僕じゃない。君の隣は。  家でゲームだけやってる僕じゃない。泥だらけの靴下を履いた僕じゃない。   部活を頑張っているあいつがふさわしい。 「かっこいいよ。新幹線」   悔しいけどな。ほめたらのびるんだろう。 「新幹線がどうした?」   やっと追いついてきたヒデはイチゴシロップのたっぷりとかかったかき氷を片手に言った。 「いや、ゲームの話」   僕は視界の中の花火をぼんやりと見つめた。   当分、りんごもりんご飴も食べれそうにない。
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