愛するカタチ

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愛するカタチ

薄暗い早朝。 小屋の戸を少し開けると、中から生温い空気が流れ出た。湿った藁と生き物の血が混ざった臭い。 レイは小屋に入るのを躊躇した。昨日の朝はこんな臭いはしなかった。 「ケイタ……?」 声をかけ小屋の扉を開けると、異臭はさらに強くなった。 親友が愛馬と過ごしていた場所の近くには、50センチほどの高さの藁が盛られていた。藁の周りには赤黒い液体の乾いた跡があり、異臭の元はこの藁の山だとすぐに気づいた。 レイは4本爪の藁用フォークでおそるおそる藁の山を崩した。 「ひっ……」 崩れた藁の隙間から、見覚えのある顔の一部が露わになった。黒目がちの大きな瞳と凛々しい眉。それは紛れもなく、親友が可愛がっていた愛馬の顔だった。 レイは親しんだ馬の惨たらしい姿に慄然とするものの、心の片隅で安堵していた。
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