52人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
奏士side
放課後の体育館。
竹刀がぶつかり合う音が、あちらこちらで響いている。
そう、今は部活の時間。僕は何をしているのかって? それは、ご想像にお任せするよ。
「ほら、まただ……」
どうにもこうにも、面白くない。
せっかく、桃ちゃんが剣道部のマネージャーになってくれたというのに……。
僕のことは放ったらかしで、1年の岡田とばかり話している。それも、すっごく仲よさそうにっ。
話していない時も、アイコンタクトっていうのかな。言葉なんていらないって感じ。僕の言いたいこと分かるかな。
「あーぁ、面白くない……」
「沖田先輩は打ち込みの練習やらないんですか? 」
ふわふわの長い髪をツインテールに結んだ美羽ちゃんが、僕の前にしゃがみ込んで小首を傾げている。
美羽ちゃんも可愛いけど違うんだ。僕は誰でもない桃ちゃんに遊んでもらいたい。
「やらないよ。つまんないもん」
「つまんないもん、じゃねぇよ。奏士、さっさと1年の相手しろ」
水も滴るいい男〜って雰囲気の土方先生が、美羽ちゃんの後ろで仁王立ちしている。大人の色気満載ですね、先生。
ま、滴ってるのは汗だけどね。
「1年の相手か……」
ふと視線を向けた先———土方先生越しに、桃ちゃんと岡田が話している姿が目に入った。
あの2人はいつまで話してるわけ? 今は部活中だってこと忘れないでよね。
「それは面白そう。やるよ」
その場に立ち上がった僕は、竹刀を握る手に力を込めた。
岡田君。部活中に女子と話し込んでるくらいだもん、少しは楽しませてくれるんだよね?
最初のコメントを投稿しよう!