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奏士side
「はぁ……」
空を仰ぎ見て目を閉じる。屋上にいると、太陽が近くに感じるよね。
あー今日も暑い。僕なんかこのまま干からびてしまえばいいんだ……。
なんてね。
「毎日、毎日、空を見上げては、ため息ばかりついてるな。何をそんなに思い悩んでいる」
高杉先輩の言葉に閉じていた目を勢いよく開く。何を? そんなの決まってる。
「岡田だよっ。 岡田 陸ーーーっ」
僕はそう高らかに叫ぶと、坂本先輩が食べようとしていたタコさんウインナーを横取りして、さっさと自分の口に放り込む。うん、美味しいっ。
「あーっ。俺のタコさんウインナーっ」
「こんなにあるんだから、1つくらいくれてもいいじゃん」
今日も2人の目の前には沢山のお弁当が並んでいる。
基本的にお弁当の中身は2人の好きな食べ物ばかりだ。
つまりは、坂本先輩へのお弁当には、タコさんウインナーが必須ってこと。みんな健気だね。
女の子達が愛情たっぷりに作ってくれたお弁当を食べ比べするなんて、やっぱり趣味が悪いと思うのは僕だけかな。
「岡田か。あいつは良いものを持ってるな。先が楽しみだ。ほら、奏士も早く食え」
2人の間に座って、高杉先輩が差し出したお弁当を受け取る。いつもありがとうございます。
これは誰からの差し入れなのかな。ピンク色のお弁当箱に、色とりどりのおかずが並んでいる。
高杉先輩の為に作ったのに、僕が食べちゃってごめんね。
そんなことを思った時——ふと頭をよぎった嫌な予感に、僕の口からはまたため息が溢れた。
「あ〜ぁ。桃ちゃんも岡田にお弁当とか作ってるのかな……」
「出たな、花宮 桃っ」
パチンと指を鳴らした高杉先輩が、僕に向けてニヤリと口角を上げた。なにその顔。ちょっとイラっとするんだけど。
「確かにあの2人は仲が良いよね。お弁当を作ってるかは分からないけど……この間、昼休みにマネージャーのスカウトに行った時は一緒にいたから……つまり、あの2人はお昼ご飯を一緒に食べてるってことになるんじゃないかな」
俺の予想が正しければ、今も一緒にいるってことだね。と言って、坂本先輩がクスクスと笑っている。
ねぇ、なんで笑ってるの? 少しも笑うところなかったんだけど?
「何それっ。あの2人っていっつも一緒にいるわけ?
はぁ……もう、やだ……。どうして僕じゃなくて岡田なんだろう。僕が2年で岡田が1年だから? だったら最悪じゃん。
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