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人気のない連絡通路のベンチに桃ちゃんと並んで座る。
絶妙な距離感にちょっとドキドキしてるのは僕だけなんだろうな。なんて当たり前だよね。
「はい」
「ありがとうございます」
桃ちゃんのカフェオレにストローをさしてから手渡す。僕はもちろん、いちごみるくね。
気持ちを落ち着かせる様に、薄桃色の液体をゆっくりと喉に流し込む。
はぁ。甘いものって最高。体が生き返る気がしない?
「沖田先輩」
不意に名前を呼ばれて視線を向けると、僕の顔の前でうさぎのキーホルダーがふわふわと揺れていた。
「このうさぎ、やっぱり沖田先輩に似てますね」
「え、そうかな。どこも似てないと思うけど」
僕はこんなにふわふわしてないし、丸くもない。
目は大きい方だと言われるけれど、ここまでは大きくないしね。なんなら、耳だってこんなに長くない。
強いて言えば、色が白いことくらいかな。
僕、基本的に屋内専門だから、日焼けとは縁遠いんだよね。
「似てますよ。沖田先輩はうさぎみたいに愛されキャラですし、それに、いちごみるく飲んでるんですよ? このうさぎ」
桃ちゃんの言葉にうさぎの手元を凝視する。あ、本当だ。
このうさぎは僕が捕獲したっていうのに、桃ちゃんに言われるまで全く気がついていなかった。
ふわふわのうさぎの小さな手にも、僕の手にも、いちごみるくが握られている。
「やっぱり、沖田先輩みたい」
桃ちゃんは、僕とうさぎを交互に見てから、そう言って笑った。
その笑顔がめちゃくちゃ可愛くて、僕は思わず「それは反則だよ……」と言いそうになった。
そんな笑顔を見せられたら抱きしめたくなっちゃうよ。
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