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「起立。礼」
「ちゃんと復習しとけよー」
そう言いながら、物理の先生が教室から出て行く後ろ姿をただただ見つめる。
復習……ちゃんとしなきゃ。先生が話してること、全く頭に入ってこなかった……。
「桃ちゃんは、僕のことしか考えられなくなっちゃいました」
不意に頭の中に響いた沖田先輩の声に、自分の顔が一気に赤くなったのが分かる。
わぁ〜っ。思い出す度に胸がドキドキして苦しくなる。
私は広げた教科書もそのままに、机の上に突っ伏して頭を抱える。
あれは……告白というものだったのでしょうか?
「驚かせてごめんね」
そう言って腕をほどいた沖田先輩は、いつもと変わらない様子だった。
帰り道も私ばかりが意識しているみたいで、なんだか居た堪れない気持ちになった。
「沖田はトップレベルの女たらし」
そういえば、土方先生がそんなことを言っていたっけ。
やっぱり、からかわれたのかな……。
ねぇ、うさぎさん。どう思う? なんて問いかけてみても、当たり前の様に答えは返ってこない。
小さい沖田先輩の柔らかいお腹をふにふにと押しながら、私は小さくため息をついた。
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