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美羽side
「ほら。無駄口叩いてる暇があったら、さっさと机を移動しろよ? 」
今日は初めての席替え。みんなで、ワイワイ机を移動中です。
「何でこのタイミングで席替え……」
桃と岡田はめちゃくちゃ席が離れてる。
新しい席はクジ引きで決めたんだから仕方ないといえば仕方ないんだけど……。なんだかなぁ。
「沖田先輩と何かあったのかな」
「え? 」
「桃だよ。昨日、沖田先輩と一緒に帰ったじゃん。それが理由なのかは分かんないけど、なんか様子おかしいよな」
一樹の言葉に視線を桃に移す。確かに……。
なんか、いつにも増してぼけーっとしてるかも。
それに、あの白いもこもこはなんだろう。あんなの前から持ってたっけ?
「って、一樹。あんた、また隣の席? 」
「おうっ。よろしくな、美羽」
「えー? よろしくしたくない」
「何だよそれっ」
まぁ。一樹が隣だと何かと便利だから、いっか。それは、さておき。
「なんかさ、うちらバラバラになってってない? 」
4人でバカ騒ぎするの、凄く楽しかったのに……どうしてこんなことになっちゃったの?
「みんなそれぞれの人生があるんだ。ずっとべったりなんてしてられないだろ。何、美羽。もしかして寂しいの? 」
机に頬杖をついた一樹が、反対の手で器用にシャープペンを回している。それをぼんやりと見つめながら、なんだか無性に切なくなった。
「寂しい……」
このままバラバラになんてなりたくないっ。
「そんなしょんぼりしなくても大丈夫だって。美羽には俺がいるじゃん」
「………………は? 」
何その、いつになく真剣な顔。なんで、そんな顔してるの?
「お前には俺がいる。だから、寂しくないだろ? な? 」
そう言って、ニカっと笑った顔はいつもの一樹だ。あ、元に戻った。
「…………うん」
「素直でよろしい。さ、勉強〜勉強〜」
一樹は何事もなかったみたいに、鼻歌を歌いながら教科書を開いている。
今の、何だったんだろう。夢かな……。
「こら美羽っ。中岡ばっかり見てないで、ちゃんと前向け」
「はぁ? 一樹のことなんか見てないしっ」
土方先生ってば、私が好きだって分かっていながら、どーゆーつもり?
全く。男ってやつは何を考えてるのかさっぱり分からない。
乱暴に開いた教科書が弾けるような音を立てた。
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