恋する士英館高校

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桃side 今日は日直。土方先生のお手伝いをする為、職員室にいます。 「これと。これと。あと、これもだな。あ、チビのお前には重すぎるか」 私が抱えている大量の本を見つめて、土方先生が心配そうにしている。 「いえ。これくらいなら大丈夫そうです」 「そうか? 無理はすんなよ? 」 「はい」 「じゃあ、頼む」 両手が塞がっている私の頭を、土方先生がぽんぽんと撫でてくれる。 こんなこと美羽ちゃんに報告したら怒られちゃうかな。 「よいしょっ」 持っているだけなら平気だけど、持って歩くとなると、ちょっと重い気がしてきた。 「1人でも大丈夫だから」なんて言わないで、隣の席の男子と一緒に行けば良かったかな。 でも、やっぱり男子って苦手なんだもん。 気まずい時間を過ごすくらいなら、これくらいの本は1人で運びますっ。 うーん。 歩いてるうちに上の方に積まれた本がだんだんずり落ちてきちゃった。 もうちょっと、こっち側に来てほしいな。そっちじゃないよ。あ、落ちちゃう……。 なんて考えている時だった。私はあろうことか、曲がり角でまたまた誰かにぶつかってしまった。 ドンっ。 「ぁっ……痛たっ」 床に座り込んでしまったはずみで、両手に抱えていた本がバラバラと音を立てて床に散らばる。 あぁ……。また、やってしまった……。もう、どんくさいにも程があるよ、自分。 とにかくぶつかってしまった人に謝らなくちゃ。 「本当にごめんなさい。怪我しませんでしたか? 」 「桃こそ大丈夫か? 」 「え? 」 この声は……。 「……陸」 どうやら私は、陸の取り巻きの女の子にぶつかってしまったらしい。 「陸くん。痛ーい」 腕を抑えて陸に甘えている女の子。 私の頭上には「えー? 大丈夫ー? 」「いきなりぶつかってくるなんて、ありえない」「早く謝りなよ」そんな言葉が次々と降ってくる。 「ごめんなさい……」 ちゃんと謝らなきゃいけないのに、私の声は思っていたよりも小さく掠れてしまった。 こんなんじゃ、彼女に聞こえてないよね……。 それに、早く本を拾い集めなきゃ。 そう思っているのに……どうしてかな、うまく体が動かない。 「ちょっとぶつかっただけだから大丈夫だよ。悪いけど、みんなは先に行ってて」 女の子の腕を確認すると、陸が私の傍に屈み込んで本を拾い集める。 「陸君も一緒に行こうよ」 「俺はこいつを手伝ってから行く」 「何で? 」 「桃は大切な友達だから」 陸の言葉に女の子たちは納得がいかない様子だった。 それでも結局、陸に促されて教室へと歩いて行った。 その後ろ姿を見つめながら、陸に迷惑をかけてしまったことが凄く申し訳なくてため息が出た。
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