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恋する士英館高校
桃side
教壇に立った先生が、カツカツとリズミカルな音をたてながら黒板に名前を書いている。
今、後ろを向いてるから大丈夫だよね。
私は視線を動かして、少し離れた席に座っている美羽ちゃんの様子を伺う。
美羽ちゃんは両手で頬を包み込むようにして、うっとりとした笑顔で先生を見てる。
その姿がなんだか可愛くて、思わず私まで笑顔になっちゃう。
「今日からお前たちの担任になった、土方 隼人だ。担当教科は数学で、剣道部の顧問をしている。1年間よろしくな」
土方 隼人先生。
長身ですらりとした立ち姿。いつも自信に満ち溢れている、真っ直ぐなその瞳。
間違いなく、誰もがイケメンと認定するその整った顔立ち。いつもはクールなのに、時折見せるくしゃっとした笑顔。
そう。
この人こそが美羽ちゃんの片想いのお相手。隼人さん改め土方先生。
隼人さんと私たちの家が近所ということもあって、小さい頃からあの神社や公園でよく遊んでもらっていたんだ。
大人っぽくて、優しくて、カッコいいお兄さんに憧れない方がおかしいと思う。私たちはあっという間に隼人さんが大好きになった。
でも、私と美羽ちゃんの大好きの種類はちょっと違う。英語で言うなら……likeとloveの違いみたいな感じ。
美羽ちゃんの初恋の人は、他の誰でもない隼人さんだ。
私たちが小学校6年生の時。隼人さんは士英館高校の先生になった。
あの瞬間。美羽ちゃんの志望校は士英館高校一択になり。美羽ちゃんと離れたくない私の志望校も必然的に士英館高校になった。
必死になって受験勉強をしたり、毎日のようにあの神社でお願いをしていた日々が今ではとっても懐かしい。
縁結びの神様は、ちゃんと美羽ちゃんのお願い事を聞き入れてくれた。学校帰りにお礼を言いに行かなくちゃ。
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