恋する士英館高校

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桃side 放課後の部室にて……。 私の怪我が治るまで「部活は休む宣言」をした沖田先輩が、土方先生に雷を落とされている。 「お前なぁ。試合が近いっていうのに、何を呑気なこと言ってるんだ。自分の立場が分かってるのか? 」 「分かってますよ。士英館剣道部のエースで次期部長。この話、この間もしましたよ? もう忘れちゃったんですか? 」 「忘れてねぇよっ。全く……エースのお前がこう毎日毎日、部活を休んでいたら他の部員に示しがつかないだろうが。 しかも、理由が女だ? 今一度、我が部の掟を思い出せっ」 土方先生の言葉に、沖田先輩が背筋を伸ばして拳を高く突き上げる。 「士英館剣道部の男子たる者、色恋に翻弄されることなく、鍛錬に励むべし。 そんなこと分かってますよ。でも、桃ちゃんが心配なんだもん」 「なんだもん。じゃねぇよっ。あ〜、分かった、分かった。桃。お前、悪いんだが部活に出てくれるか? 何もしなくていいんだ。見学で構わないから、部活にだけは出てくれ。この通りだ」 土方先生に頭を下げられたら、断る理由なんてない。 それに、沖田先輩がここ数日、部活を休んでしまったことは私の責任だ。 私が不注意で怪我さえしなければ、沖田先輩も部活を休む必要なんてなかったんだから……。 まだ足が痛むから、いつもと同じ様にマネージャーの仕事は出来ないけど……やれることはやらなきゃ。 「私もそろそろ部活に出ようと思っていたので、丁度良かったです。 私のせいで、美羽ちゃんが全部の仕事をやらなきゃいけなくなって、部員の皆さんの負担も増えてしまいましたよね……本当にすいません。 重いものを持ったり、走ったりは出来ないですけど……部活にはちゃんと出ます」 土方先生は「お前はいるだけで良い」そう言って笑ってくれた。 その笑顔は、小さい頃、神社や公園で一緒に遊んでいた時と何も変わらない。 いつだって1番近くで私のことを守ってくれていた優しい笑顔だ。 「桃ちゃんが部活に出るなら僕も出ます。早速着替えますっ」 カバンを抱えた沖田先輩が、部室の奥にあるロッカールームへと勢いよく駆けていく。 その後ろ姿を見つめながら、土方先生が盛大に息を吐いた。 「はぁ……。どうしてよりによってアイツだったんだ? 桃ならもっと良い男を捕まえられただろ」 土方先生の言葉に私は首を横に振る。 「私には、沖田先輩より良い男なんて他にいません 」 土方先生は驚いた様に目を瞬かせると「全く、桃に惚気(のろけ)を聞かせられる日が来るなんてな……俺も歳をとったもんだぜ」と言って笑った。
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