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「美羽には俺がいるじゃん。だから、寂しくないだろ? 」
一樹はそう言って笑っていた。そうだ、一樹はいつだって私の側にいて、笑っていたんだ。
一樹が側にいてくれるだけで元気になれた。大丈夫だって思えた。
一樹の弾けるような笑顔が好きだった。でも、それだけじゃなかったんだ。
私ってめちゃくちゃバカだ……。いつの間にか、一樹のこと好きになってたんだ…。
一樹……。もう、遅いよね……。
私はゆっくりと目を閉じた。
………………。
……あれ?
「ふっ、本気で好きな奴が誰か分かったか? 」
土方先生の優しい声で目を開ける。
「どうして? 」
「お前がふざけたことばっかり言うから、ちょっとからかったんだよ」
そう言ってニヤリと笑う先生はめちゃくちゃ格好良い。
「はぁ……。桃に続いて美羽まで好きな男が出来るなんて……兄さん、ちょっと寂しいんですが」
「兄さん? 何それ」
「最近、奏士にそう呼ばれてるんだよ。どうやら俺はシスコンらしい」
土方先生が私の髪を撫でながら柔らかく微笑んでいる。
「中岡に泣かされたら真っ先に俺に言えよ? 」
「先生……違うな。お兄ちゃんありがとっ‼︎ 」
お兄ちゃんはクスリと笑うと、私をソファから立たせて背中をぽんと押した。
部室のドアを勢いよく開けて廊下を全力で走る。
好きって難しい。ラブとライクの違いって何だろう。考えても考えても、その境界線がよく分からない。
私は土方先生がお兄ちゃんになっても大好きだ。だけど、お兄ちゃんはもう1番じゃない。
私が1番好きなのは……。
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