恋する士英館高校

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奏士side 本日快晴。お天気が良いと、不思議と気分も晴れるのはどうしてなんだろう。お日様の光に何かパワーがあるのかな。 まぁ、僕としては、太陽の力よりも桃ちゃんの方が断然上だけどね。桃ちゃんが隣にいてくれたら、どんなに憂鬱な雨の日だって、気分爽快なんだもんね。 「はい、先輩。今日は先輩のリクエストにお応えして、エビフライを入れてみました」 「わぁ。僕のワガママを聞いてくれてありがとう」 「ワガママじゃないですよ? 私は先輩が喜んでくれるお弁当を作りたいんです。だから、食べたい物がある時はちゃんと言ってくださいね」 「うん。分かった」 わ~い‼︎ 今日も桃ちゃんの手作り弁当が食べられる。幸せすぎる。 お弁当の蓋を開けて中を確認。本当だ。エビフライが入ってる。 しかも、可愛いピックでおしゃれしてるじゃん。桃ちゃんが作ると、お弁当まで可愛くなるなんて知らなかった。 はぁ、食べるのもったいない。 それにしても、さっきからじとーっとした視線がめちゃくちゃ絡みついてくる。 せっかく美味しそうなお弁当を堪能しようと思っているのに、何事だろう。 僕の右手には、桃ちゃんと色違いの箸がすでにスタンバイ済みだ。 後は、美味しそうなエビフライを口に放り込んで、感想を桃ちゃんに伝えるだけ。それなのに……。 「……」 「……」 「……何か用ですか? 」 目の前に座っている2人に、僕は堪らず声を掛けた。どうしてそんなに見てくるのかな。気が散って食べられないんだけどっ。 「花宮さんのお弁当、美味しそうだなぁ。俺も食べたいなぁ。あー羨ましい」 「花宮 桃‼︎ 俺様の分の弁当はどうした? 」 「えっと……すいません。先輩達の分はありません」 「無いだと? どうして俺たちの分を作らない。どうしてだ花宮 桃。きちんと理由を説明しろっ」 テンション高めな高杉先輩の声に、驚いた桃ちゃんがびくっと肩を揺らした。 「ちょっと先輩。桃ちゃんが怖がってるから問い詰めるのとかやめてくれない? 理由は前にも言ったでしょ? 桃ちゃんのお弁当は彼氏の僕しか食べられないのっ」 「そんなわけあるか‼︎ 俺様は副部長だぞ。いいからそのエビフライをよこせっ」 「はぁ? 」 「一樹、はい、あ~ん♡ 」 不意にあたりに響いた美羽ちゃんの声に、みんなが一斉に隣のテーブルに視線を送る。 座っているのは中岡君と美羽ちゃんだ。 中岡君に玉子焼きを食べさせながら、美羽ちゃんは幸せそうに微笑んでいる。それに負けないくらい、中岡君も幸せそうだ。 「え、みんな、どうしたの? お弁当食べないの? 」 美羽ちゃんと中岡君は、どうして自分たちが注目されているのかは、分かっていないみたいだ。すっかり2人の世界だね。 よしっ。それなら、僕だって好きにやらせてもらうよ。 「桃ちゃん。僕にもあ〜んやって‼︎ 」 「え? あ〜ん、ですか? 」 「そう。だめ? 」 「だめじゃないですけど……ちょっと恥ずかしいです」 ほんのりピンクに染まった頬と、俯いた仕草がめちゃくちゃ可愛い‼︎ こんなに可愛い桃ちゃんが見られるなら、たまには困らせてみるのもいいかもしれないな。 「恥ずかしがらなくて大丈夫だよ、花宮さん。僕が優しくリードしてあげるから」 「花宮 桃。ほら、早くエビフライを食べさせろ。ずっと口を開けていると顎が外れるだろう」 はぁ? 坂本先輩と高杉先輩がなんか言ってる。本当にこの2人は……油断も隙もあったもんじゃ無いっ。 「だめだめ~‼︎ 桃ちゃんは僕のものなの~‼︎ 」 ハイエナ達から守る為に、僕は隣に座っている桃ちゃんをぎゅっと抱き寄せる。 桃ちゃんは誰にも渡さないんだからっ‼︎
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