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はぁ……。
それにしても、この状況……緊張するっ。私は胸に手を当ててひとつ息を吐いた。
1番後ろの席だから、クラス全体を見渡すことができるんだけど……。当たり前のように知らない人ばかりだ。
こーゆーの苦手。美羽ちゃんと同じクラスで本当に良かった。そう思う。
美羽ちゃんは美人で、背が高くて、大人っぽくて、社交的で……。私とは本当に真逆。
ほら。もう隣の席の男の子と仲良さそうに話してる。
「おい」
急に声を掛けられて、思わず体がビクッと跳ねてしまった。声の主は、どうやら隣の席の男子みたい。
「えと……何? 」
なるべく和やかに視線を向けると、ちょっと見た目が怖い人と視線が重なった。
え? もしかして怒ってるのかな。私……何かしちゃった?
勝手に狼狽えている私にはお構いなしで、彼は平然と話し続ける。
「大丈夫か? 気分悪そうだけど……」
「……え?」
予想外の言葉に、私は無意識のうちに目を瞬かせた。
そっか……。私のことを心配してくれたんだ。ちょっと意外だな……。なんて、失礼だね。
「うん、大丈夫。ちょっと緊張しちゃって……。こういうの苦手なんだよね」
へへっ。と笑うと、彼も微かに笑った気がしたけれど、すぐに目を逸らされてしまった。
「それなら、いい」
「うん。心配してくれてありがとう」
彼は私の言葉には答えずに、自己紹介の説明をしている土方先生を見つめながら、小さく頷いた。
きっと怒っている訳ではないんだと思う。思うんだけど……。ううっ。仲良くなれる気がしないよ……。
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