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授業をサボった僕を、お咎め無しで見逃してくれた土方先生と別れて教室に戻る。
クラスメイト達が慌ただしく帰り支度をしている中、僕は机に突っ伏して目を閉じた。
土方先生には部活はちゃんと出ろよって言われたけど……このまま寝ちゃおっかな。
今日は部活に行きたくない気分なんだ。
どうしてかって?
それは、桃ちゃんと岡田 陸が仲良く話してるのを見たら、またヤキモチ妬いちゃいそうだから。
どんなに妬いても食べられないなら意味ないしね。
桃ちゃんが好き。桃ちゃんを独り占めしたい。そう思う。
だけど、もう岡田 陸と話さないでほしい。そう伝えるのはちょっと違う気がするんだ。
桃ちゃんは僕所有物じゃない。桃ちゃんの自由を奪う権利なんて僕にはないよ。
「奏士‼︎ 」
名前を呼ばれて顔を上げると、クラスメイトの綾ちゃんがなんともいえない表情で僕を見下ろしていた。
「綾ちゃん……その顔気持ち悪いからやめた方がいいよ」
「はぁ~? 奏士は殴られたいのかな? 」
「殴られたくないです。綾ちゃんのパンチ痛いもん。で、何か用? 」
そうそう、忘れてた‼︎ と言って、綾ちゃんがぽんと手を鳴らした。
「可愛い女の子が呼んでるよ♡」
「可愛い女の子? 」
「あの子ってあんたの新しい彼女でしょ? 学校中で噂になってるじゃない。あの沖田に彼女が出来たーって。
どんな子かなぁって興味はあったけど、わざわざ見に行くのも趣味悪い感じがして我慢してたんだよね。わぁ、本物だぁ」
綾ちゃんは教室の入り口を見つめながら目をキラキラと輝かせている。
「あんたの歴代彼女の中で1番可愛いよね。元カノは気が強い子が多かったけど、あの子は清楚な感じだね。可憐って言葉が似合うなぁ」
確かに、少し俯いている桃ちゃんは、近づくと消えてしまいそうなくらい儚げで———そして何より可愛い。
僕の語彙力の無さはとりあえず見て見ぬ振りをして———こんなに可愛い子を独占しようとしてたなんて僕は身の程知らずだったのかもしれないな。
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