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部員が部室に戻ってからも、マネージャーにはまだ片付けという雑用が残っている。
部員の数に対してマネージャーがたった2人という現実。さすがに全てのことを私と美羽ちゃんだけでこなすのは難しい。
ということで、部員が交代でお手伝いをしてくれるのだけれど——今日は、運悪く陸の番だった。
「何かあったのか? 」
私の手伝いをしながら、陸が心配そうに声を掛けてくれる。絶対にバレていると思った。
だから、聞かれたら笑顔で誤魔化さなきゃって思ってた。
それなのに、私はシミュレーション通りに上手く笑うことが出来なかったみたいだ。
「何もないよ。どうして? 」
「桃が嘘をついても、顔に書いてあるからバレバレだ。俺には分かる」
何を根拠にそんな自信満々に言い切るのか分からない。
顔に書いてある? そんな訳ないじゃない。変な言いがかりはやめてほしいよね。
まぁ。実際、何もないと言ったのは嘘なのだけれど……。本当のことを見透かされると誤魔化したくなるのは私だけかな。
「嘘なんてついてません。陸の勘違いです。お手伝いありがとうございました」
片付いた道場を見渡して、手早く手荷物をまとめ陸に頭を下げる。
「さ、帰ろう、陸」
一刻も早くこの場から立ち去りたかった。
陸と2人でいると、ついつい弱音を吐いてしまいそうになる。そんなの許されないことだ。
だって、私は「あの人」に嫉妬しているんだから。
異性の友達にヤキモチを焼くなんて変だって分かってるけど、このモヤモヤを抑える方法が分からない。
だから、私も異性の友達には相談しない。
陸には……言わない。
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